今朝のWSJ紙に、9月26日のドイツ議会で、スタインブリュック、ドイツ財務相は「今回のウオール街の金融危機は世界経済に対する考え方を変えさせる。世界経済を支配していたアメリカの力は徐々に衰退していく。アメリカは世界の金融システムのスーパーパワーのステイタスを急激ではないが失い、多極化の方向に向かう。」と語ったと紹介している。今回のドイツ財務相のこのような内容の発言は米国の金融危機発生後初めてと書いた。
同紙によれば、ドイツ財務相は「次回G7の会合には中国をメンバーに加える必要がある」と述べ、さらに「英米流の利益のみ追求するフリーマーケット政策を非難した」と紹介した。
ドイツ財務相は議会が終った後、言い過ぎたと思ったのか、「米ドルのステイタスは失われない」と強調し「この先10年の間に、時間をかけて日本円、ユーロ、人民元に置き換わっていくだろう」と慎重な発言に変わったと紹介している。大臣のちょっとした発言があとあと大きく影響することに気づいたのかもしれない。
今朝のWSJ紙トップは、米国の金融安定化策が暫定的に合意されたと報じている。その骨子を読むと①政府原案の不良債権の買取額7000億ドルを半減する、②議会に監視委員会を設ける、③政府が損失を出せば、金融機関が納税者に払い戻しすることになっている。
今朝のブルームバーグニュースによれば、共和党下院のグレッグ議員は「正式合意は得られていない」と発言、カンター共和党議員も「条文に明記するまでは判断を差し控える」と語ったと依然として流動的であることを示唆していた。
米金融危機の発端は返済出来ないと承知しながら貸した金融機関の自己責任から端を発した。住宅の値段が上がり続けている間は良かった。8月時点のデータだが住宅価格が下げ止まる気配はない。8月の米新規住宅建設件数は46万戸と18年ぶりの低い水準だった。
米国地銀トップのワコビアの株価が倒産危機に直面しシティーグループに吸収されるとして急落している。英国銀行中堅のブラッドファンド・アンド・ビングレーも国有化の危機に一時見舞われた。いずれも住宅ローン破綻がそもそもの背景である。
今回の金融不安と言う病気は住宅価格の値下がりに起因している。住宅の値段が下げ止まり、家を新たに買おうとする気運が生まれてこない限り米議会で新たな法案が成立してもG7で協調利下げを実施しても病気は回復しないだろう。
日本ではどうか。トイレットペーパーがなくなるとスーパーに主婦が殺到したという話が第一次オイルショックのとき現実に日本でも起こった。一昨日スーパーに買い物に出かけたがバナナが棚から消えていた。信じられない話だが風聞の怖さを再認識させられた。
「昭和2年(1927)3月14日、衆議院予算総会で、大蔵大臣の片岡直温(なおはる)は、演説の途中,大蔵次官からメモが回されてきた。「今日の正午ごろ渡辺銀行が破綻しました」と読み間違えた。メモには「休業」とあった。大臣の発言のあとパニックとなり渡辺銀行は倒産、銀行が次々倒産した。そのあと日本では昭和恐慌に発展した。2年後米国は大恐慌に見舞われた」と司馬遼太郎は「風塵抄」に記している。
病気も経済も心が決める。恐怖心を持つと治る病気も治らない。今回の米金融安定策は一時の恐怖心を鎮めるバンドエイドの役割は果たすだろう。それ以上でも以下でもない。(了)
同紙によれば、ドイツ財務相は「次回G7の会合には中国をメンバーに加える必要がある」と述べ、さらに「英米流の利益のみ追求するフリーマーケット政策を非難した」と紹介した。
ドイツ財務相は議会が終った後、言い過ぎたと思ったのか、「米ドルのステイタスは失われない」と強調し「この先10年の間に、時間をかけて日本円、ユーロ、人民元に置き換わっていくだろう」と慎重な発言に変わったと紹介している。大臣のちょっとした発言があとあと大きく影響することに気づいたのかもしれない。
今朝のWSJ紙トップは、米国の金融安定化策が暫定的に合意されたと報じている。その骨子を読むと①政府原案の不良債権の買取額7000億ドルを半減する、②議会に監視委員会を設ける、③政府が損失を出せば、金融機関が納税者に払い戻しすることになっている。
今朝のブルームバーグニュースによれば、共和党下院のグレッグ議員は「正式合意は得られていない」と発言、カンター共和党議員も「条文に明記するまでは判断を差し控える」と語ったと依然として流動的であることを示唆していた。
米金融危機の発端は返済出来ないと承知しながら貸した金融機関の自己責任から端を発した。住宅の値段が上がり続けている間は良かった。8月時点のデータだが住宅価格が下げ止まる気配はない。8月の米新規住宅建設件数は46万戸と18年ぶりの低い水準だった。
米国地銀トップのワコビアの株価が倒産危機に直面しシティーグループに吸収されるとして急落している。英国銀行中堅のブラッドファンド・アンド・ビングレーも国有化の危機に一時見舞われた。いずれも住宅ローン破綻がそもそもの背景である。
今回の金融不安と言う病気は住宅価格の値下がりに起因している。住宅の値段が下げ止まり、家を新たに買おうとする気運が生まれてこない限り米議会で新たな法案が成立してもG7で協調利下げを実施しても病気は回復しないだろう。
日本ではどうか。トイレットペーパーがなくなるとスーパーに主婦が殺到したという話が第一次オイルショックのとき現実に日本でも起こった。一昨日スーパーに買い物に出かけたがバナナが棚から消えていた。信じられない話だが風聞の怖さを再認識させられた。
「昭和2年(1927)3月14日、衆議院予算総会で、大蔵大臣の片岡直温(なおはる)は、演説の途中,大蔵次官からメモが回されてきた。「今日の正午ごろ渡辺銀行が破綻しました」と読み間違えた。メモには「休業」とあった。大臣の発言のあとパニックとなり渡辺銀行は倒産、銀行が次々倒産した。そのあと日本では昭和恐慌に発展した。2年後米国は大恐慌に見舞われた」と司馬遼太郎は「風塵抄」に記している。
病気も経済も心が決める。恐怖心を持つと治る病気も治らない。今回の米金融安定策は一時の恐怖心を鎮めるバンドエイドの役割は果たすだろう。それ以上でも以下でもない。(了)