今朝のWSJ紙は、このところのドル相場堅調は危険な兆候だと警告している。ドルが円やユーロに対して上げたり下げたりに一喜一憂しているひとは日本には多い。為替取引は単なる金儲けの一つの手段ではない。為替は国の価値の象徴であることに今少し思いを巡らせてほしい。
月並みな話だが、日々、当たり前のように日本円を使っているが一切通用しなくなるとどうなるか。日本でも昭和22年(1947年)、新円切り替えが断行され、それまで使われていた紙幣が紙くずになった。
いま米国や英国が国債を増発している。日本も相続税を免除するという名目で金利の全くつかない国債まで動員して、景気対策の一助にしようとの考えだ。これは極論だが、病人に対してオブラートにつつんで猛毒を飲ませるようなもので、副作用がいずれ出てくるだろう。
今朝の読売新聞は、「長期金利じわり上昇」の見出しで、ドイツ、アメリカ、日本で、長期国債の金利が上昇していることを取り上げた。日本の新発10年物国債の利回りは1.475%へ上昇した。ドイツでは3.217%、米国で2.94%と今年最高を記録した。英国では、3月25日、40年物国債の入札で、応札が予定額を下回る「札割れ」が7年ぶりで起きたと書いた。
その記事には、ドイツのシュタインブリック財務相が、「各国でこれほどの国債が発行されていけば、いつか引き受けてくれる投資家をみつけられなくなるだろう」と話したと紹介している。ドイツ人は天文学的インフレを経験した。国債の大増刷を、ドイツ人は生理的に警戒するのであろう。
4月7日のWSJ紙の記事に戻す。今朝のNYダウは、米国企業の業績不安から売られ、前日比186ドル安、7,789ドルで取引を終了した。NY原油(WTI)先物相場は、前日比バレル1.90ドル安、49.5ドルで取引を終了した。
ところがドル相場は、対ユーロ、対円、対英ポンドなど主要通貨に対して堅調に推移している。これは実態経済の状況を反映していないと書き、米国よりさらに悪い経済の国の通貨と比べての話に過ぎない。ビル全体が激しく燃えている。そのなかで、アメリカの燃え方が比較的軽微であるからだとWSJ紙は指摘した。
米ドルが買われているが実態を反映していないというのである。日本では通貨の値打ちが下がる、つまり円安を歓迎する。自国通貨の値打ちが上がる、つまり円高を喜ばない。こんなおかしな国は日本以外にないと再々指摘しているが、日本では全く相手にされない。EUも米国も英国も自国通貨下落を警戒する。
日本では1ドル=100円を回復したと歓迎している。マスコミもまるで輸出業者の身内のようにはしゃいでいる。対ユーロで1ユーロ=135円へ回復した。ドルもそうだが、欧州の経済の現状に照らせば、ユーロが買われる環境にはない。安全パイとしての日本円の評価が大きく後退したことが影響した。
名古屋ではタクシーに乗る客がひところの1/4になったと運転手がぼやいているという話を聞いた。自動車産業の影響が極端な形で名古屋で表面化している。一年前過去最高の高収益を上げていたトヨタが3月決算で赤字を出すと発表した。関連会社がその結果、病気に例えれば、全身痙攣を起こしている。
日本政府は、利子がつかないが相続税がかからないということで「無利子非課税国債」の発行を検討している。日本の国債の発行残高は2010年3月末に581兆円に膨らむと先の読売朝刊に出ていた。1ドル=100円だから計算しやすい。5兆8,100億ドルである。約6兆ドルの数字が直ちに流れるから円安要因だ。
ところで、米国では、焦げついた住宅ローン証券化商品の残高は控えめに見て5兆ドルあると言われる。米国政府はこの内1/4を買い取る計画だ。そのお金が米国にはない。国債を大増刷する。中国や日本に国債を買ってもらう以外にない。買い手が見つからなければアフガニスタンもイラクもないことになる。
ただ、米国で明るい指標もある。それは30年物の住宅ローン金利が年4.6%台へ下がった。そのため借り換えする人が急増している。今回の金融危機はサブプライムローン問題が原因で起こった病気である。病根は住宅部門にある。病院へ行くとあれこれ検査するが、住宅部門の検査データが回復すれば意外に本復は早いかもしれない。
ドル堅調が騙しでないことを期待したい。それと同時に国債大増発の副作用としての長期金利のジワリ上昇は住宅部門の回復を遅らせる双刃の刀であるだけに、国債相場下落、金利上昇の動向から目を離すことはできない。(了)
月並みな話だが、日々、当たり前のように日本円を使っているが一切通用しなくなるとどうなるか。日本でも昭和22年(1947年)、新円切り替えが断行され、それまで使われていた紙幣が紙くずになった。
いま米国や英国が国債を増発している。日本も相続税を免除するという名目で金利の全くつかない国債まで動員して、景気対策の一助にしようとの考えだ。これは極論だが、病人に対してオブラートにつつんで猛毒を飲ませるようなもので、副作用がいずれ出てくるだろう。
今朝の読売新聞は、「長期金利じわり上昇」の見出しで、ドイツ、アメリカ、日本で、長期国債の金利が上昇していることを取り上げた。日本の新発10年物国債の利回りは1.475%へ上昇した。ドイツでは3.217%、米国で2.94%と今年最高を記録した。英国では、3月25日、40年物国債の入札で、応札が予定額を下回る「札割れ」が7年ぶりで起きたと書いた。
その記事には、ドイツのシュタインブリック財務相が、「各国でこれほどの国債が発行されていけば、いつか引き受けてくれる投資家をみつけられなくなるだろう」と話したと紹介している。ドイツ人は天文学的インフレを経験した。国債の大増刷を、ドイツ人は生理的に警戒するのであろう。
4月7日のWSJ紙の記事に戻す。今朝のNYダウは、米国企業の業績不安から売られ、前日比186ドル安、7,789ドルで取引を終了した。NY原油(WTI)先物相場は、前日比バレル1.90ドル安、49.5ドルで取引を終了した。
ところがドル相場は、対ユーロ、対円、対英ポンドなど主要通貨に対して堅調に推移している。これは実態経済の状況を反映していないと書き、米国よりさらに悪い経済の国の通貨と比べての話に過ぎない。ビル全体が激しく燃えている。そのなかで、アメリカの燃え方が比較的軽微であるからだとWSJ紙は指摘した。
米ドルが買われているが実態を反映していないというのである。日本では通貨の値打ちが下がる、つまり円安を歓迎する。自国通貨の値打ちが上がる、つまり円高を喜ばない。こんなおかしな国は日本以外にないと再々指摘しているが、日本では全く相手にされない。EUも米国も英国も自国通貨下落を警戒する。
日本では1ドル=100円を回復したと歓迎している。マスコミもまるで輸出業者の身内のようにはしゃいでいる。対ユーロで1ユーロ=135円へ回復した。ドルもそうだが、欧州の経済の現状に照らせば、ユーロが買われる環境にはない。安全パイとしての日本円の評価が大きく後退したことが影響した。
名古屋ではタクシーに乗る客がひところの1/4になったと運転手がぼやいているという話を聞いた。自動車産業の影響が極端な形で名古屋で表面化している。一年前過去最高の高収益を上げていたトヨタが3月決算で赤字を出すと発表した。関連会社がその結果、病気に例えれば、全身痙攣を起こしている。
日本政府は、利子がつかないが相続税がかからないということで「無利子非課税国債」の発行を検討している。日本の国債の発行残高は2010年3月末に581兆円に膨らむと先の読売朝刊に出ていた。1ドル=100円だから計算しやすい。5兆8,100億ドルである。約6兆ドルの数字が直ちに流れるから円安要因だ。
ところで、米国では、焦げついた住宅ローン証券化商品の残高は控えめに見て5兆ドルあると言われる。米国政府はこの内1/4を買い取る計画だ。そのお金が米国にはない。国債を大増刷する。中国や日本に国債を買ってもらう以外にない。買い手が見つからなければアフガニスタンもイラクもないことになる。
ただ、米国で明るい指標もある。それは30年物の住宅ローン金利が年4.6%台へ下がった。そのため借り換えする人が急増している。今回の金融危機はサブプライムローン問題が原因で起こった病気である。病根は住宅部門にある。病院へ行くとあれこれ検査するが、住宅部門の検査データが回復すれば意外に本復は早いかもしれない。
ドル堅調が騙しでないことを期待したい。それと同時に国債大増発の副作用としての長期金利のジワリ上昇は住宅部門の回復を遅らせる双刃の刀であるだけに、国債相場下落、金利上昇の動向から目を離すことはできない。(了)