経済の世界における原油、為替、金利は、人間の体でいえば、体温、脈拍、血圧のように、健康状態を診断するにあたって、基本的な3点セットだと常々思っている。
サブプライムローン問題に端を発して問題化した世界の金融危機は、欧米はじめ世界の中央銀行が、金利をゼロに下げ、量的金融緩和との併せ技で、多少、経済に落ち着きがみられる。ところが、日本はじめ欧米がペーパーマネーを乱発するから、自然の成り行きとして、紙幣乱発の通貨は値下がり方向に動くという見方で現実の相場は動いていくとの見方が多い。
景気が悪くなると全ての需要が減る。物の値段は基本的には需要と供給の関係で決まる。世界金融危機を契機として、需要が減り、在庫が増えるから、原油相場がピークの1/3の水準まで値下がりした。原油相場は、一時バレル32ドル台まで値下がりしたあと現在48ドル前後で、なんとか踏み留まっているかに見受けられる。
日本では原油がバレル147ドルまで値上がりし、ガソリンがリッター200円目前になるとマスコミを先頭に国民総出で騒ぐ。ところが原油が現在のようにバレル48ドル前後になり、ガソリンもリッター115円前後で落ち着くと話題にならない。
ガソリンはリッター115円になったが、これは円相場が1ドル=100円近くまで売られた結果である。この先ドルが売られ、ドル建ての原油相場が安定すれば再びリッター100円近辺まで値下がりするだろう。ところが円高の恩恵で、ガソリンが下がり始めると喜ばない。むしろ、デフレ再来だと不安がる。
マスコミも独自の見解を展開することはまずやらない。読者が「なぜおまえのところは他と同じ記事を載せないのか」と新聞社に怒鳴りこんで来るひとが結構多いと聞いた。ひとそれぞれ顔が違う。身も心も違う。にもかかわらず日本人は同じでないとなぜか落ちつかない人が多い。
日本人は小学校のときからひとが赤のランドセルを持っていると赤だという。自分は黄色にするという子供は極めて珍しい。「ユニーク」ということばは褒め言葉だが、日本では変わり者だと軽蔑の対象になる。違ったことをクラスで言いだそうものなら徹底していじめの対象にされる。
たまたまだと言われそうだが、いま正に、原油問題を取り上げた雑誌がある。時々紹介している二ユーズウイーク日本版である。いま駅の売店に並んでいる。この雑誌は一般誌だが、サブプライムローンで世界が金融危機に陥って以来、特に経済について、印象的な記事を連発している。
「原油がもっと安くなり続ける理由」と題して、「長期的な視野に立って歴史をひもとけば、原油などの商品価格は一貫して下落している」と、4月29日付けのニューズウイーク日本版で、ルチル・シャルマ氏(モルガンスタンレー・インベストメント・マネジメントの新興市場責任者)の記事を掲載している。
一方、同誌は、「原油価格はまだ上がる」と題して、「今後20年で儲けたいならコモディティーに投資せよー大物投資家ジム・ロジャーズが強気相場を主張する理由」について、インタビュー記事を紹介している。なかなか面白い。
ルチル・シャルマ氏は、「200年間、テクノロジーの進歩や採掘方法のお陰で下落している。一時的な反発はあっても下落を続ける。」、「需要は価格を反映する。」、「見当はずれの上げ相場。」、「中国の影響は過大評価。」、「今は長い下り坂の入り口」と「いずれ値上がりするという大方の見方は間違っている」と指摘している。
これに反して、ジム・ロジャース氏は、「重要なのは急落後の時期を利用して儲けることだ。」、「世界中の中央銀行が史上初めて同時に紙幣を増刷している。」、「中国経済は米経済に比べたらちっぽけなものだ。」、「ウオール街は傍流になる。いまは金貸しが世の中を動かす時代でない。」「いまは現金だって紙くず同然になりうる。」、「私が中国の中央銀行の総裁だったら、原油と小麦と亜鉛を買う。彼らも実際そうしている」とルチル・シャルマ氏の見方を全く受け入れようとしない。
NHK・BS「おはよう世界」が伝えるブルームバーグニュースによれば、4月22日のNYダウは、引け前20分で下げ、前日比82ドル安、7,886ドルで取引を終了した。金融株が下げをリードした。貸倒引当金を積み増す銀行が多い。信用不安が根強く残っていると解説していた。原油相場は今のNY市場では主役でないのであろう。コメントに出なかった。米銀行にスポットが当たっている。
IMFが2009年のGDP見通しを日本は当初のマイナス5.8%をマイナス6.2%へ、米国マイナス2.8%、ユーロ圏マイナス4.2%とそれぞれ下方修正した。足元の景気は厳しいことを裏付けた。(了)
サブプライムローン問題に端を発して問題化した世界の金融危機は、欧米はじめ世界の中央銀行が、金利をゼロに下げ、量的金融緩和との併せ技で、多少、経済に落ち着きがみられる。ところが、日本はじめ欧米がペーパーマネーを乱発するから、自然の成り行きとして、紙幣乱発の通貨は値下がり方向に動くという見方で現実の相場は動いていくとの見方が多い。
景気が悪くなると全ての需要が減る。物の値段は基本的には需要と供給の関係で決まる。世界金融危機を契機として、需要が減り、在庫が増えるから、原油相場がピークの1/3の水準まで値下がりした。原油相場は、一時バレル32ドル台まで値下がりしたあと現在48ドル前後で、なんとか踏み留まっているかに見受けられる。
日本では原油がバレル147ドルまで値上がりし、ガソリンがリッター200円目前になるとマスコミを先頭に国民総出で騒ぐ。ところが原油が現在のようにバレル48ドル前後になり、ガソリンもリッター115円前後で落ち着くと話題にならない。
ガソリンはリッター115円になったが、これは円相場が1ドル=100円近くまで売られた結果である。この先ドルが売られ、ドル建ての原油相場が安定すれば再びリッター100円近辺まで値下がりするだろう。ところが円高の恩恵で、ガソリンが下がり始めると喜ばない。むしろ、デフレ再来だと不安がる。
マスコミも独自の見解を展開することはまずやらない。読者が「なぜおまえのところは他と同じ記事を載せないのか」と新聞社に怒鳴りこんで来るひとが結構多いと聞いた。ひとそれぞれ顔が違う。身も心も違う。にもかかわらず日本人は同じでないとなぜか落ちつかない人が多い。
日本人は小学校のときからひとが赤のランドセルを持っていると赤だという。自分は黄色にするという子供は極めて珍しい。「ユニーク」ということばは褒め言葉だが、日本では変わり者だと軽蔑の対象になる。違ったことをクラスで言いだそうものなら徹底していじめの対象にされる。
たまたまだと言われそうだが、いま正に、原油問題を取り上げた雑誌がある。時々紹介している二ユーズウイーク日本版である。いま駅の売店に並んでいる。この雑誌は一般誌だが、サブプライムローンで世界が金融危機に陥って以来、特に経済について、印象的な記事を連発している。
「原油がもっと安くなり続ける理由」と題して、「長期的な視野に立って歴史をひもとけば、原油などの商品価格は一貫して下落している」と、4月29日付けのニューズウイーク日本版で、ルチル・シャルマ氏(モルガンスタンレー・インベストメント・マネジメントの新興市場責任者)の記事を掲載している。
一方、同誌は、「原油価格はまだ上がる」と題して、「今後20年で儲けたいならコモディティーに投資せよー大物投資家ジム・ロジャーズが強気相場を主張する理由」について、インタビュー記事を紹介している。なかなか面白い。
ルチル・シャルマ氏は、「200年間、テクノロジーの進歩や採掘方法のお陰で下落している。一時的な反発はあっても下落を続ける。」、「需要は価格を反映する。」、「見当はずれの上げ相場。」、「中国の影響は過大評価。」、「今は長い下り坂の入り口」と「いずれ値上がりするという大方の見方は間違っている」と指摘している。
これに反して、ジム・ロジャース氏は、「重要なのは急落後の時期を利用して儲けることだ。」、「世界中の中央銀行が史上初めて同時に紙幣を増刷している。」、「中国経済は米経済に比べたらちっぽけなものだ。」、「ウオール街は傍流になる。いまは金貸しが世の中を動かす時代でない。」「いまは現金だって紙くず同然になりうる。」、「私が中国の中央銀行の総裁だったら、原油と小麦と亜鉛を買う。彼らも実際そうしている」とルチル・シャルマ氏の見方を全く受け入れようとしない。
NHK・BS「おはよう世界」が伝えるブルームバーグニュースによれば、4月22日のNYダウは、引け前20分で下げ、前日比82ドル安、7,886ドルで取引を終了した。金融株が下げをリードした。貸倒引当金を積み増す銀行が多い。信用不安が根強く残っていると解説していた。原油相場は今のNY市場では主役でないのであろう。コメントに出なかった。米銀行にスポットが当たっている。
IMFが2009年のGDP見通しを日本は当初のマイナス5.8%をマイナス6.2%へ、米国マイナス2.8%、ユーロ圏マイナス4.2%とそれぞれ下方修正した。足元の景気は厳しいことを裏付けた。(了)