辛坊治郎氏講演会:芦屋ルナホール
江嵜企画代表・Ken
麻木邦子先生(近畿税理士会芦屋支部副支部長)から、12月6日に、芦屋支部創立30周年記念式典が開かれる。ご自身も、支部来歴を話す機会がある。時間が許せば、ご家族も一緒にいかがですか、とお誘いを受けた。
第一部は式典である。第二部を見たら記念講演会とあり、元読売テレビ解説委員長で現芦屋大学客員教授の辛坊治郎氏が演題「氾濫する情報―正しい判断に必要なこと」で話されると知り、楽しみにして出かけた。
いつものように会場の様子をスケッチした。ご婦人も結構多く、ほぼ満員だった。支部長の光永きみ子さんの主催者挨拶の中で、当支部は女性の税理士さんの比率が25%と全国一高いと聞いて大いに納得した。
辛坊氏の話は午後2時前から約1時間半あった。プロとはかくあるものかとのお手本のような内容だった。次から次に話術巧みに飛び出す話全てが、臨場感溢れ、メモするひまもなく、聞き惚れてしまった。
尖閣問題でビデオを流して任意出頭した海上保安官の話から始まった。これだけ取り上げても紙数がないから省略する。一言でいえば「日本は法治国家でない」という言葉が印象に残った。
新入社員に必ず話すことにしている言葉がある。「クレームの中にこそ会社の未来がある」ということばが次に印象に残った。北陸のある傘屋さんの応対が紹介された。「雨に濡れたとき、お前の傘で迷惑を受けた。弁償せよ。」とクレームを受けた。予想外のクレームに驚いたが、クレームを付けてくれた人に感謝した。いま一本3万円で飛ぶように売れているという。
テレビ局は300万の視聴者を相手にする。クレームが殺到する。最初に電話を受けた時の応対の仕方で全てが決まる。「感謝の気持ち」を持って電話を受けろと教えていると話した。
マスコミに対する応対の仕方で、「赤福」は勝者、大阪「吉兆」は敗者となった。「吉兆」は「パートの責任だ」といった従業員の一言で潰れた。「赤福」は「心の底から謝っているように取られるように応対した」。日本人は素直に謝られると追及しない。それが日本の文化である。
世論を敵に回すと会社も政治家も立ち直れない。「世論に権利が与えられた時代になった。30年以上報道関係の商売をやって来たが今のような世の中は知らない」という辛坊氏の言葉に迫力を感じた。
一方、「すなおに謝る」という日本の文化は外交では全く通用しない。ひとこと謝ると即罪を認めたことになる。相手はひとつ取れば、またその次を狙ってくる。ロシアの北方領土問題の対応しかり、中国の尖閣然りである、と力が入った。
「最高の結果を目指して、最悪の事態に備える。ことが起こった時にパニックにならない。その時起こったことだけで運命は終わりにならない。その次に起こることに備えろ。」
「情報が氾濫している。どこが本当か。どこがウソか。見抜くことが必要になっている。」
「現在最高の権力を持っているのは菅総理でない。菅総理に秘書官が3省庁で5人しかいない。仙石官房長官には8省庁計12名付いている。仙石さんは、目先のディベートのテクニックでは彼の右に出る男は居ない。しかし、仙石さんでも5年先の日本を読めない。」
「これからは、一人一人が自分で考えて生きていく以外にない。皆様方のお力でこれからの日本のために若者に教えてやっていただきたい」と話して講演を終えられた。しばし、拍手が止まらなかった。
素晴らしい機会をいただいた麻木邦子先生に感謝、感謝である。(了)