老舗合繊メーカーT社株主総会風景
江嵜企画代表・Ken
老舗合繊メーカーT社の株主総会が6月22日午前10時から大阪北にあるウエスティンホテルで開かれ楽しみにして出かけた。開始20分前に会場に着いた。いつものようにスケッチを開始した。描きはじめには空席もあった。いつの間にか満席になった。大部分は男性であるがご婦人の姿も結構見られた。
誤弊を恐れずに言えば出席者に会場入り口で配られるお土産目当てに参加される方も多いかもしれない。この日は、帝人フロンティア(株)が開発した「身に纏うことで肌荒れを防ぎ、皮膚に潤いを与える化粧品ウエア」を謳い文句としたケース2ケが用意された。帰宅して家族に渡したら大変好評だった。当社は“HumanChemistry.HumanSolutins”を謳い文句としている。ただ環境に優しい、消費者に親しみを感じさせるイメージが当社に少ないことが惜しまれる。
型どおり会場正面、2ケ所に設けられたスクリーンに当社の業況が解説された。業況はレポートを見ればある程度分かる。筆者のお目当ては質疑応答で株主が何を聞き、それに社長さんがどう答えられるかに興味がある。この日は12人が質問した。
一番印象に残ったのは、医師が書いて当局に提出する資料に当社の子会社の担当者が代筆していた件をある株主が質した場面だった。「当社の柱であるヘルスケア事業で先日、あってはならないことが報じられた。ところが本日の事業報告で社長さんは口頭でさらっと流された。出荷停止を受けるに至った原因は何か。コンプライアンスもあったものではない。どういう認識でおられるのか。責任の所在はどうなのか。当件については社外取締役さんのご意見も聞きたい。」と話した。
担当取締役からお答えしますと議長〈社長〉が前置きして「昨年9月に事実関係を把握した。直ちに対策チームを立ち上げた。原因究明にあたっている。他の製品についても実施している。再発防止に全力で取り組んでいる。」と答えた。社長さんからは「新たなシステムを導入しており、二度と同じことが起こらぬと考えている。」と答えた。一呼吸おいて「社外取締役さんからもお答えが欲しい」と手を挙げた。社外取締役の一人が「現在調査を進めている。しかるべく対応したい。以上です。」と着席した。質問した株主は「重く聞けなかった。軽く聞いておきます」といって席についた。
質問時間は10時45分ごろから約1時間。一番手は「ヘルスケア事業を地道に積み上げるのはわかるがM&Aを通じて拡大する考えはないのか」と質した。社長さんから「構造改革を進めながらM&Aも実施していく。人工関節事業はそのひとつだ」と答えた。
2番手は「原油安でGMとの炭素繊維開発に対する意欲が後退しているのではないか」と質した。担当役員さんは「GMとの間で開発は最終段階に入っている。軽量化の方向性は不変であると考えている」と答えた。3番手は「英国のEU離脱となればリスク対応しているのか」と質した。担当役員さんは「為替に影響が即出てくる。1ドル=100円を見ている。」と答えた。4番手に先の代筆問題の質問が出た。
その他の質問では「大屋晋三さんは一流の会社は一流の人との交流が大事だと言っておられた。当社のヘルスケア事業は後発である。一流の研究者や将来、一流となられる人たちと交流があるのか」と質した。社長さんは「貴重なご意見いただき感謝申し上げます」と答えた。「今期の利益見通しを前期の670億円から580億へ減らしている。具体的に聞きたい」と質した。担当役員さんから「海外での売り上げが中国含め厳しく見た。為替レートを前期は1ドル=120円を1ドル=105円でみた。為替変動が大きく影響する」と答えた。
お昼所用があり質問終了を確認後退席した。日々激しく変動する世界情勢、人それぞれの、見方があろうが一抹の不安を残した株主総会だった。(了)