チューリップースケッチ＆コメント

桜の花が散ったあと、次は私の番よといわんばかりに
チューリップの花が元気よく飛び出してきた。

広辞苑によるとユリ科の多年草。中央アジア原産。高さ
20～50センチ。４～５月ごろ花茎を出し，頂端に黄・赤・白
などの綺麗な六弁鐘形の花を開く。オランダで改良が
進められ、特に第二次大戦後に著しく発達したとあった。

主婦の友生活シリーズ、「花屋さんの花」ポケット図鑑に
よると、最も親しまれている球根植物。現在栽培されている
ものは200種。花言葉は「博愛」、「名声」、「失恋」といろいろあり
人間との関係の深さを示していると解説している。

例の喫茶「いけだ」を出て数歩歩いたところで、通り沿いに
しつらえられた花壇から、「見て、見て」と身を乗り出さんばかりに
咲いている姿に引き込まれるようにスケッチした。（了）

江嵜企画代表・Ken



Kenさんのスケッチは、ブログ容量の関係で削除させて頂きましたが、１１月１日に、「かんぽう」さんから『ユニークに乾杯』というタイトルで出版予定です。定価2.000円。
ISBN978-4-904021-03-3　　C0071 1905E　
株式会社 かんぽうサービス　℡06-6443-2173
大阪市西区江戸堀1-2-14　肥後橋官報ビル６Ｆ（〒550-0002）

原油73ドル、幽霊と見れば枯れ尾花ー学校で教えてくれない経済学

４月１９日、NY原油WTI相場が一時バレル７３ドルを突破した。経済学の教科書では、物の値段は需要と供給のバランスで決まるというのが定説だが、米国の原油在庫は８年来最高の水準にあるにも関わらずなぜ原油の値段は上がり続けるのだろうか？

WSJ紙電子版（４月１９日）は、基本的にはイラク戦争懸念、ナイジエリアにおける暴動に伴う供給不安、中国、インドの工業化進展に伴う需要増であるが、1000から1,200億ドルと、３年前の倍以上の規模で投機資金が原油市場へ流れ込んできていることが背景にあると一部アナリストの見解を紹介している。

米エネルギー省は、米国の原油在庫は、1998年5月29日以来最高の3億4,600万バレルに達したと発表した。しかし、同時にガソリン在庫は減少している。今回の原油相場上昇は、原油独自のバランスにより、むしろ、米国のガソリン相場が構造的な精製能力不足を材料に上昇し、それが原油相場を押し上げた要素が強いことがしばしば指摘されている。

米国のガソリン相場（5月物）、ガロン5.42セント上げ2.22239ドルで取引された。これはハリケーン・カトリーナ以来の高値である。ガソリンスタンドでの小売値段は一般的には卸値段にガロン65から70上載せて決まる。

カトリーナ襲来の際、一部のガソリンスタンドでは3.5ドルまで値上がりした。ところが嵐が通り過ぎたあと急落、ガロン1.5ドル近辺まで値下がりした。それがいまハリケーンなしで３ドルまで値上してきたことになる。もし暦どおりならハリケーンは8月にやってくるだろう。それがまた投機資金の思う壺、原油相場を煽りたてている要素が強いようだ。

現在の米国の原油在庫は8年前、1998年なみの過去最高水準にある。その年、NY原油相場は史上最高の原油在庫を嫌気して急落、バレル11ドルまで値下がりした。ただ、8年前は現在のように年金ファンドもヘッジファンドも原油市場にほとんど参加していなかった。世界の原油需給構造は基本的に異なると原油アナリスト、Philip　K.　Verleger氏のコメントをWSJ紙は紹介している。

一方、OPECメンバーは一貫して原油在庫増加を懸念材料として指摘している。WSJ紙はOPEC事務局のコメントとして、投機資金が原油離れすれば原油相場は一転してバレル20ドル台へ急落するとの見方を紹介している。原油相場急落はOPECの命取りになるからだ。

幽霊と見れば枯れ尾花。現在の原油相場はイラン問題が10ドル嵩上げした相場であると一部のアナリストは指摘している。幽霊に惑わされてはなるまいと、投機マネーに翻弄される原油狂乱相場を本気で心配しているのはほかならぬOPECであるかもしれない。

江嵜企画代表・Ken

造幣局の通り抜け・・・１

木、金、土以外は、PCの前に座っているのが多いので、運動不足になる。

運動不足は太り易いので、できるだけ散歩ぐらいはするようにしている。

ちょうど大阪造幣局で、桜の通り抜けがあったので、散歩がてら出かけてみた。

凄い人だった。

記事を書く時間がない時は、写真を整理しながら日記様式で掲載しています。
ご厚情を、　m(_ _)m　


マウスオンで見てください。






造幣局の桜は種類が多いので、「ほー！」「・・・へー！」と心の中で感動しながら、桜の下を通り抜けてきた。






中国からの観光客も増えたようで、場内アナウンスは、中国語でも流れていた。

・・・英語での放送はなかった。　(?_?)?




ブシューっと蒸気を噴出するパフォーマンス的な出店もあり、楽しかった。(^-^)
　



あまりにたくさん撮影したので、また明日。(^_-)-☆

木、金、土は治療日で記事を書く時間がありませんので、その間は写真を整理して掲載していきます。

<(_ _)>ヨロシク！

NYダウ194ドル高、利上げ打ち止め観測台頭でー学校で教えてくれない経済学

4月１８日、NYダウは、3月２７/２８開催のFOMC（米連邦公開市場委員会）議事録が、
次回会合が予定されている5月10日の利上げをもって終了することを示唆したとして、前日比194ドル上げ、11,268ドルで取引を終了した。

一方、NY原油先物WTI相場は、イラン核開発懸念など供給不安からこの日も上昇し、一時71.60ドル、終値で61.35ドルと史上最高値を更新した。一方、この日金相場も623ドルまで値上がりした。銀、プラチナ、パラジウム相場も新高値を更新した。

NYダウは、利上げ継続と原油相場高騰を嫌気して、前日、63ドル下げていた。一夜明けてFOMCの議事録をみて、一転、強気に変わった。債券相場も上昇し、10年物国債利回りは4.98％へ低下した。

利上げ継続を材料に堅調に推移していたドル相場は、利上げ打ち止めが近いことを嫌気して売られ、1ドル＝117円割れ寸前まで値下がりした。対ユーロでもドルは値下がりし1ユーロ＝1.2284ドルで取引された。ドルが売られやすい地合いが益々強まりそうだ。

この日のNYダウ急騰には、サンフランシスコ連銀理事のJanett　Yellen女史の発言が大きく影響したとWSJ紙電子版は（4月18日）は指摘している。

Yellen 理事は、①過度な引き締めは、データは時間的ずれを伴から対応が後手にまわると景気に与える影響が大きく出る、②3月の米卸売り物価指数は0.5％増で予測の0.4％並である。食料とエネルギーを除くコアインフレ指数は0.1％にとどまっていると発言した。

Yellen理事は住宅需要の減少にも触れているが、この日米商務省は、3月の米新規住宅着工件数が、7.8％減少、予測の年204万件を大きく下回る196万件となったとの発表がYellen発言とのタイミングと合致したことも相場急騰に効果的だったようだ。

原油高騰も気がかりだが、多くの投資家は、米国景気を力強く牽引してきた住宅需要が利上げ継続で手痛い打撃を蒙れば個人消費の足を引っ張ることを強く警戒していた。このところ米住宅価格は大きく値下がりしてきていた。

Yellen理事はサンフランシスコでの演説の中で、GDPデータが大幅に伸びる、住宅価格が急回復するような事態にならない限り自説を変えないと発言したとWSJ紙は紹介している。

影響力のある理事とはいえ、一理事の発言がNYダウ上昇を強烈に後押しした。十分打ち合わせした上での作戦だろうが、アメリカという国の一面を教えているようだ。（了）

江嵜企画代表・Ken

心斎橋大丸東入り口ースケッチ＆コメント

日本画家、猪熊佳子先生の個展が心斎橋大丸で開かれていたが
本日最終日なので出かけた。帰り大阪梅田での会合の時間待ちを
生かしてスケッチした。

入り口の左右と入ったところ計三箇所に椅子が用意されており
待ち合わせ場所としても結構利用されていることがわかった。
当店一階は全フロアが貴金属宝石コーナーとなっており画面正面の
ショーウインドーにはネックレスが飾られていた。

画面左がデパート店内、右が心斎橋筋である。
夕方の時間で客の出入りは激しく、スケッチをしている間に
座席の客人もほとんど別人に変わっていた。

心斎橋大丸は大丸本店、大丸誕生の地である。
北隣に昨年秋そごうが復活した。そごうとの客の奪い合いもあるが
大丸にとってはむしろプラス効果を受けたようで、2月決算では
売り上げ利益とも昨年対比増加したようだ。

地下鉄駅ひとつ南に難波駅があり、そこにはライバル店高島屋が
2009年目標に全面改装すると先日発表があった。

大阪キタの梅田地区には老舗の阪急が大改装中である。新たに
三越が2009年に参入してくる。大丸梅田店もJR大阪駅改築に併せて
大改装計画を発表した。

大阪灘波心斎橋のミナミ対梅田界隈のキタでの生き残りを
かけたデパート戦争はまさにはじまったばかりである。（了）



Kenさんのスケッチは、ブログ容量の関係で削除させて頂きましたが、１１月１日に、「かんぽう」さんから『ユニークに乾杯』というタイトルで出版予定です。定価2.000円。
ISBN978-4-904021-03-3　　C0071 1905E　
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大阪市西区江戸堀1-2-14　肥後橋官報ビル６Ｆ（〒550-0002）

ガソリン急騰、金618ドル、NYダウ63ドル安ー学校で教えてくれない経済学

イースター休暇明けの４月１７日、NYダウは先週末比63ドル値下がりし11073ドルで取引を終了した。原油WTI相場が一時71ドルを突破し、昨年8月末につけた史上最高値のバレル70.81ドルを上回ったことでインフレ懸念、個人消費減退予測で株が売られた。

7月先物のWTI相場はバレル72.94ドルで取引された。先高感が消えていないことを教えている。ロンドン・ブレント物原油相場も値上がりし93セント値上がりしバレル71.50ドルで取引された。日本の原油相場に直接影響するドバイ原油も新高値を更新している。

日本では為替相場が1ドル＝118円台で比較的安定していることでドルベースでの値上がりに対してクッションの役割を果たしてきた。ただ、競争の激しい陸運業界などは値上げを見送ってきたが我慢も限界に来たと話している。また、石化メーカーもナフサ高や物流費や燃料費上昇を理由に相次ぎ値上げを発表し始めたと伝えられる。

この日金相場がオンス18ドル強値上がりし、618ドルで取引された。プラチナ、パラジウム、銀などその他貴金属相場も軒並み上昇した。銅など非鉄金属相場も上昇した。

ただ、NY為替市場はこのところ1ドル＝118円、1ユーロ＝１．２１ドルをはさんでの極端なこう着状態が続いている。年末までにドルは1ドル＝108円、1ユーロ＝1.26ドルの予測も出てきた。ドル安を見越して群れ全体が一気に方向転換する、動物の世界ではしばしば見られるStampede現象が起こる嵐の前の静けさかもしれない。

原油相場が新値を更新してきた背景は原油供給に対する供給不安がイラン核開発問題でイラン政府と欧米諸国との確執によって解決のメドが一向に見えてこないためである。少しでも妥協の手がかりが見えてくれば原油相場は一気に調整されるとの専門家の期待は裏切られている。

国際エネルギー機関（IEA）調べによれば、世界の原油需要は日量8,500万バレルあり、最近需要の伸び率は鈍化しているとIEAも発表している。ところが、イラン問題に加えてナイジエリア、ベネズエラでの供給不安がビデオテープのまき戻しの如く報道される。

さらに最近ではアフリカのチャドが世銀との融資トラブルで日量16万バレルあった輸出が止まるという話までが材料にされ投機家の思う壺で原油相場は最悪の事態に直面している。

イラン問題は米国のガソリン相場にも火をつけた。今朝のNY相場はガロン2.78ドルで取引された。イラン問題の深刻さは日本人にはいまひとつぴんと来ないせいか、マスコミも政治家も見て見ぬフリをしているように見えるのが気がかりでならない。（了）

江嵜企画代表・Ken

ドル安円高が進むのか？：WSJ紙記事紹介ー学校で教えてくれない経済学

WSJ紙電子版（４月１７日）に、たまたまかもしれないが、ドル先安を警戒する記事が２本掲載されていた。ひとつは産油国のドル売り、今ひとつは日本の長期金利の急騰からくるドル離れを予見している。

最初の記事は、産油国のドル離れがドル安を進めるとの指摘である。Mark　Whitehouse記者は、米ドルの先行きを予測することは至難の業であるが、大胆な予測をすれば、それはオイルダラーが決めるだろうと一部のエコノミストの見方を紹介している。

ここ１～２年での原油相場の急騰で、中東、ラテンアメリカ、ロシアの輸出業者の手の中へ巨額のドルがシフトした。それがグローバルマーケットを潤した。その結果、ドル相場堅調を支援した。ところが、米国の赤字拡大を見越して、ドルからユーロなど手持ち外価の多角化の動きが芽生え始めた。

Citigroupのあるエキスパートは、年末までに、１ドル＝108円、１ユーロ＝1.28ドルを予測する。大方のエコノミストのコンセンサスでも、１ドル＝109.2円、１ユーロ＝1.25ドルへドル安が進むと見ている。

先週末のNY原油市場で、WTI相場は、バレル69.32ドルを記録した。米財務省の最新データでは、主要産油国の収入は2005年、7,000億ドルを越えた。その結果、産油国の保有外貨高は、2002年末の4,000億ドルから2005年9月末で7,000億ドルに達した。

ところが米国議会の外国人によるM&Aの動きを規制する機運にあること、外国人の米ドル建て資産が今年1月時点で一年前の1,000億ドルが一挙に500億ドルまで減少した、UAE,カタール政府の保有外価をドルから他通貨へ切り替え発表がドル先安を説明している。

いまひとつの記事は、日本の長期金利上昇がドル安を進める。Justin　Lahart記者と林ゆか記者連名の記事によると、日本の長期金利が先週末1.98％まで急騰してきた。早ければ夏場にもゼロ金利政策が解除される事態になれば、日本の長期金利上昇は加速化するから、ドル資産を売り，売った資金で日本国債買いが起こり、ドル安が進むと予測している。

日本生命は、現在4,000億ドルの資産を運用しているが、ポートフォリオに日本国債を4月新年度入りから340億ドル追加した。その結果為替リスク負担が17億ドル減る。円資産を増やすことは当社の基本政策であるとの日本生命のスポークスマンの話を紹介している。

円安が進むと見る評論家は多い。しかし、日本生命が円資産を増やし、産油国はドル資産を減らす。金持ちの行動を見ている方が下手な解説を聞いているよりよほど勉強になる。（了）

江嵜企画代表・Ken

弓弦羽神社ースケッチ＆コメント

阪急電車、御影駅から南へ徒歩５分足らずのところに
弓弦羽神社がある。神社東隣には香雪美術館があり、
この界隈でもとりわけ落ち着いた閑静な場所に位置している。

神社伝承によれば応神天応の母、神功皇后が新羅凱旋の
帰途立ち寄ったとある由緒ある神社である。氏子もしっかり
しているのであろう本殿はじめ建物に風格が感じられる。

スケッチをしていても参拝が絶えない。氏子の信仰の熱さが
言わず語らず伝わってくる。

２月半ばに訪れたときには本殿傍のしだれ桜もようやく芽を
拭き始めたころであった。ところが、４０日以上立つと盛りを過ぎて
花を落とした枝が目立った。

２月には境内を通して右にしだれ桜において本殿を望んだが
４月は裏に回り氏子代表が寄進したと灯楼をバックにしだれ桜を
スケッチした。（了）



Kenさんのスケッチは、ブログ容量の関係で削除させて頂きましたが、１１月１日に、「かんぽう」さんから『ユニークに乾杯』というタイトルで出版予定です。定価2.000円。
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桜吹雪：住吉山手四丁目ースケッチ＆コメント

阪急御影駅下車、駅東のガードをくぐり北に向かう。

左に深田池を見ながらまっすぐ坂を登ると消防署があり
程なく行き止まりのところを右折すると左手に武田邸が
ある。

見ごろは過ぎたがそこの桜がすばらしいと今朝、
例の喫茶「いけだ」の仲間に勧められたので出かけた。

武田邸はこの地では武田長兵衛さんのお屋敷ということで
昔から広く親しまれているが、門の入り口には武田資料館の
表札がかかっていた。

惜しいことに評判の桜の花は夜来の雨で桜吹雪の真っ只中で
裏口へ抜ける路地はじゅうたんをびっしり敷き詰めたように
吹雪で飛んだ桜の花びらで埋まっていた。

来年は花の盛りに是非来て見たいと思いながらスケッチした。（了）



Kenさんのスケッチは、ブログ容量の関係で削除させて頂きましたが、１１月１日に、「かんぽう」さんから『ユニークに乾杯』というタイトルで出版予定です。定価2.000円。
ISBN978-4-904021-03-3　　C0071 1905E　
株式会社 かんぽうサービス　℡06-6443-2173
大阪市西区江戸堀1-2-14　肥後橋官報ビル６Ｆ（〒550-0002）

井上八千代さんースケッチ＆コメント

第１７回『読売こころ塾』が、大槻能楽堂（大阪市中央区上町）に、ゲストに
京舞井上流五世家元、井上八千代さんを迎えて開かれるというので応募、
幸い５００人に選ばれたので、楽しみにして出かけた。

塾長の宗教学者、山折哲雄さんの巧みな話術もあるが、午後２時から４時まで
井上さんの実演の踊りあり、家元ならではの語りあり、都をどりのスライドによる
解説ありで堪能した。

話は都をどりのスライドから始まった。京都から東京へ遷都され京の都が
寂しくなった。京都を元気づけようと都をどりが始まったというエピソードをはじめ
て知った。京舞は２００年の歴史があるそうだが、今日のゲストの井上八千代さんは
五代目を襲名したが、もともと家元を継ぐつもりなど全くなかった。

母親は素人、父と祖父は観世流能楽師、祖母はあの四世井上八千代さんである。
能舞台は子供のときから親しんでいたが能舞台に上がったのは本日はじめて
と話していた。井上さんによると舞いは女がし易いが能は男の世界で女は
できないそうだ。

いろいろな話のなかで一番印象的だったのは、「人間は一人、舞は生きるという
ことを形にすること、お客さんに命を見ていただくために舞う」ときっと
して言われた言葉だった。「舞を見てお客さんにも苦しんでもらいます」といわれた
井上さんの言葉には正直びっくりした。

山折さんが井上さんに四世の師匠から何か特別な芸談はお聞きでしたかと
聞いた。すると井上さんは、祖母は芸談を一切しなかった人でしたと答えた。
一呼吸あって、井上さんは、「祖母は、『お腹で舞え』、『役になりきれ』、
『舞台は生もの』とよく言ってました。答えになりましたでしょうか」と
はにかみながら山折さんに応じられた。

ここで井上さんは、突然席を立ち、マイクをテーブルにおいて踊りの
指導をはじめた。山折さんもここは慣れたものでさっとご自身も舞台に
飛び出して井上さんの前に正座した。

右手を上げるしぐさから、腰を落とす動作、前かがみ、腰を少し引いて
歩を前に進めるしぐさが続く。予定外のレッスン場面だったそうだが
会場は大いに湧いた。舞いながら、井上さんは、「お腹で舞え」というのは
舞の姿の中心がお腹で決まるからだと説明した。

井上さんは子供のころから「おいどを落とせ、おいどを落とせ」と何度も
言われたのを覚えているそうだ。関西ではおいどはおしりのことである。
お腹を中心にしながらおいどを落としてひと回転する。回るから舞いというと
身振り手振りで話も弾んだ。

マイクなしで朗々とした声が会場にこだました。話が一段落して質問の時間に
「お声がよく通りますがなにか秘訣は？」と聞かれた。

井上さんは「いえいえ」と手でさえぎりながら、「これは地声なんです。
子供のころからお前は声が大きい、大きい。」とよく祖母に叱られたと
答えておられたが、どうしてどうしてマイク無用の見事な声量だった。

師匠の思い出はと山折さんに水を向けられて、井上さんは、
「祖母は『怒られても泣いたらアカン』と厳しかった。稽古以外の
祖母はやさしいおばあちゃんだった。自分は２人の祖母を経験できて
幸せでした」とにこにこ顔で話された。

会場の中から教職関係の若い女性が立って質問した。
「井上さんは、若い舞妓さんをどう教えられるのか、なにか若者に対する
感想を聞かせて欲しい」と尋ねた。

「最近の若者は一人になることに不安を持っているようだ。すぐに群れようとする。
それも大勢でない。２人か３人で寄り集まる」と井上さんは答えられた。
１０人入って１０人とも辞めた年もあったそうだ。

次に若者と師匠との関係について会場で質問が出た。
井上さんは、「師に対する受け止め方が違うように思う。言葉使いから違う。
仲良しと思うのは結構だが師と生徒とが距離を保つことがないように
思う」と答えられた。

どの世界でも同じだなと聞いたが、本日の会場でも井上八千代さんの話に
いたく共鳴された人は多かったに違いない。

「一人になりきれない限り一人前でない。」

一人になることに不安を持つ若者がどんどん増えてきた今の日本で、
井上八千代さんが特に若者に送りたい心からなるメッセージだった
のではなかろうか。（了）



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