同志社大クラーク会館チャペル:京都ユダヤ思想学会
江嵜企画代表・Ken
同志社大クラーク会館で京都ユダヤ思想学会の初会合が開かれるので出てみないかと知人に誘われ、正直、失礼ながら、物見遊山半分で出かけた。
ユダヤについては何かしら訳ありの民族であるという感じをかねがねもっており、関心は深い。大会は6月7日(土)午後1時半にはじまった。3名のユダヤ研究者の発表があった。
パレスチナにおけるアラブ民族との衝突は避けられると努力したユダヤ人の紹介があった。もともとへブライ語で書かれた論文(「ヘブライ人への手紙」)がギリシャ語に移された過程で誤訳があったことも知った。
スピーチは予備知識なしでは,当然ながらとても歯が立たない。物身遊山では消化不良に終わるのは当然だった。
午後4時20分からのお目当ての勝村弘也氏(神戸松蔭女子学院大学教授)の講演を聞いた。演題は、「レオ・ペッグと有賀鐡太郎-京都におけるユダヤ学の黎明ー」で、「ユダヤ教の本質」(レオ・ベッグ著)を翻訳したユダヤ研究の第一人者、有賀鐡太郎氏とベッグとのエピソードや「ユダヤ教の本質」について解説された。
「ユダヤ教には教義は存在しない。その結果として宗教哲学が重要になる。この意味でも、京都はまさにユダヤ思想研究にふさわしい」との勝村弘也教授の言葉が印象に残った。
有賀は、ペッグ宛の手紙に「自分はクリスチャンだが、公平さ(Fairness)がイエスに教えられた思想の中で最も重要なもののひとつである。」と書き、「わが国におけるユダヤ教に関する知識は、主として、キリスト教徒か、反ユダヤ運動家達によって提供されていた」と書いていると話された。
記念講演のあと、有賀鐡太郎氏の長女に当たる方が父親の思い出を語られた。「良心には、一人ひとりの良心ともうひとつ、大きな大義がある。それを求めていく」と話されたそうだ。その言葉を「後期高齢者」という今頃になって思い返しています」とまるで少女のように、はにかみながら、しかし、一語一語しっかりと話された。父親に対する尊敬の想いがにじみ出ていて実に爽やかだった。
この日会場に選ばれた同志社大クラーク館は110年前の建物である。老朽化が進んでいたが、昨年建設当時のまま再建された。クラーク館界隈が発掘調査の結果、相国寺、相国寺門前町を経て、薩摩藩邸が建てられた由緒ある跡地であることも知った。
勝村教授の記念講演の会場の様子をスケッチした。(了)