彼岸花(曼珠沙華)
江嵜企画代表・Ken
8月1日、68歳で急逝した義弟の四十九日の前日、彼の供養にと思い、御影中町2丁目の路傍に咲いた彼岸花をスケッチしていた絵を自宅で彩色した。夏の最中スケッチした浜木綿が咲いていたお隣の銀杏の木の根元に咲いていた。一般には、彼岸花は田んぼのあぜ道などで群生している。街中の道路脇ではめずらしい。おそらく近くにお住いの方が球根を植えられたのだろう。
ヤフーのブログで彼岸花を検索した。開花期が1週間ほどなのに、秋の彼岸と時を同じくするかのように開花することから、あの世とこの世が最も通じ易い時期に咲く花でもあると解説していた。
彼岸花は葉も枝も節もない。花茎が地上から天に向かってすっくと立っている。花に近づいてよく見ると、6枚の花びらが放射状につき、リボン状に絡み合っている。旗を折りたたんだような格好で6個のつぼみが出番を待っていた。スケッチしてから2日経った今朝、側を通り過ぎたら、見事に開花していた。
花の根元からおしべが6本出ている。おしべの先端には1ミリもない大きさで小判状に花粉を載せているのでわかる。真ん中から一番長く飛び出しているのがめしべだそうだが、素人目にはよく見えない。日本画家、猪熊佳子先生から常々、よく観察しなさいと、アドバイスを受けている。最近ようやく、よく見るようになった。
彼岸花は花と葉が同時に出ないことから韓国では「相花花」と呼ぶことが多い。「葉は花を思い、花は葉を思う意味」。学名はLycoris(リコリス)、ギリシャ神話の女神、海の精、ネㇾイドのひとりLycoriasからとった。
彼岸花のことを曼珠沙華(まんじゅしゃげ)と呼ぶ。サンスクリット語で天界に咲く花という意味。おめでたいことが起こる兆しに赤い花が天から降ってくるという仏教の経典から来ている。サンスクリット語でmanjusakaと書く。いろいろ教えられる。
なぜ田んぼの畔に多いのか。野ネズミ、モグラが、虫などが田を荒らす。彼岸花にはアルカロイドという毒があるため彼らが彼岸花を忌避した。モグラは肉食だが、餌にするミミズが彼岸花を嫌って寄り付かない。土葬を野ネズミやモグラから守る意味もあってお墓に彼岸花を植えた。反面でんぷんを多く含んでいる。第二次世界大戦のとき、救飢植物として食用にされた。
彼岸花の花言葉。「情熱」「独立」「再開」「あきらめ」「転生」「悲しい思い出」「想うはあなた」「また会う日を楽しみに」とあった。映画「おくりびと」のラスト近くの火葬場のシーンに「また会おうな」と語りかける印象的な場面を思い出す。合掌。(了)