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エッセイとショートショートと―あちこち話が飛びますが

クモの運命

2015-05-24 07:35:16 | こころ
 クモは、ダニやゴキブリなどのいわゆる害虫を捕食してくれるという。
 或る朝、滑って抜け出せないのか、洗面台に小さなクモがじっとしていた。そっと手に取り外に逃がしてあげた……と思ったら、まだ手にくっ付いていたのか、そのあと手を洗った際、揉むような格好となり少なくとも“重傷”を負わせてしまったようだ。「あちゃー」と外に葬ってあげたのだが、何ともかわいそうなことをした。

 その日その時そこに居なければ、まだまだ元気で“長生き”できたのに、と悔やまれるところ。
 これって、地面を這い回るアリにも言えるし、そろそろ道路に出てくるカエルでも同じ。また、同じことは僕ら人間にも言える。あの場所に居なければ、あの飛行機に乗っていなければ。あるいは、あの会社に入っていなければ、あの人と付き合っていなければ、等々。
 もちろん逆もあるだろう。あの電車に乗っていたからあの子に巡り合えた、あの人のおかげでここまで来られた、…。

 ところでクモと言えば、、お釈迦様とカンダタとの関係(ご存じ『蜘蛛の糸』)を思い出してしまう。小さな生き物を助けるというと、お釈迦様になったような気にもなるのだが、お釈迦様と人間との距離は、人間とクモとの距離よりもはるかに遠いのだろうと思う。人間がクモをどうするかという配慮よりも、お釈迦様が人間をどうするかという配慮の方が、ずっとずっと重く深いものに違いない。

 …あの日あのクモがいたことで、こんなことまで考えさせられたのでした。(クモが苦手な人には悪いと思いつつ)
 

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