国家とは何か
政治とは何か
それに答えるのに、西洋哲学者の名を羅列した政治哲学などまったく不要、というより無意味です。
答えは簡単。一言で、互助システムです。
互いの自立を助け合うシステムが民主主義国家であり、そのための条件整備を行うのが政治です。それ以上でもそれ以下でもありません。
わたしが、ハーバード大学のソフィストと呼ぶサンデル教授をはじめ、その太鼓持ち、千葉大学の小林正弥教授らの「政治哲学」「公共哲学」は、過去の哲学者の著作からその政治・公共に関する考察・発言を拾い出し、政治思想の「事実学」をつくるのみです。政治思想の書物を整理して並べるという単純作業でしかなく、哲学的考察(本質に向けて原理的に思考する)とは無縁ですが、これに哲学という名をつけるのですから、詐欺行為としか言えず、知的退廃という他ありません。
個々人の実存レベルにおける生々しい人間的な生を、政治次元や公共次元に限定して語り、それに哲学という名をつけて権威づけるのは、極めて政治的(政治主義)な態度です。人間の生の意味と価値を追求する(五感で感じ知り、心に想うところから白紙に戻して考える)という「主観性の知」を豊かに開発するエロース溢れる哲学の作業を、客観主義的な事実学に貶める哲学は、もちろんまったく哲学ではありません。
まさに羊頭狗肉の見本。
武田康弘