思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

ノット・東響の武満「弦楽のためのレクイエム」・ドビュッシー「海」・ブラームス「交響曲1番」 充実の演奏会

2016-10-09 | 芸術

2016年 10月9日 ジョナザン・ノット指揮・東京交響楽団 (東京オペラシティシリーズ第94回)
東響の欧州演奏旅行プログラムB=プレコンサートを聴いての感想です。


まず、東響が武満徹に委嘱した作品「弦楽のためのレクエイム」は、欧州演奏会には欠かせない作品。
武満没後20周年でもあり、この作品を来日したストラヴィンスキーが偶然知り高く評価した為に、無名の青年=武満は一躍世界的に知られることになったのですから、東響は武満の恩人でもあります。

演奏は、美しく精緻で、改めて武満徹の独創性=その厳しいまでの突き詰めを知りました。
続けて「海」なのですが、その前にノットさんは三度も拍手で呼び出されました。

ドビュッシー「海」は、メリハリの利いた迫力ある演奏で、印象派の絵画のような、ではなく、ドビュッシーが愛した北斎の海、デフォルメされた心理的かつ象徴的な海でした。フランスの香りではなく、英語で話されているような響きでしたが、たいへん聴き応えがあり満足。


休憩の後、いよいよブラームスの1番です。

早めのテンポでグイグイ進みます。ドイツ的ではなく、苦渋とは無縁の明るいブラームスでした。ドイツ観念論とか大陸合理論という大きさ・重さはなく、イギリス経験論の世界だな、と感じ、「なるほど!」と合点がいきました。
それは、ノットさんの音楽づくりの基本で、ブラームスのような古典性のあるロマンでは、少し物足りない感じを残します。あまりにスムースに話されると、深み=精神性を感じられないのと一緒です。ブルックナーや現代音楽で見せるノットマジックの見事さは、イギリス経験論のもつ分かりやすさであり、それは新たなクラシックの世界を拓きますが、それだけですべての音楽を包摂することはできないな、とも思います。

ともあれ、東響から厚みのある、そして日本のオケにはなかった表出力を生み出すノットさんの指導は、素晴らしい!!みなが自信に満ち、堂々と演奏しているので、従来の日本の水準を超えた音が出ていました。

東響は、オランダ人のスダーンに10年間学んだあとにイギリス人のノットさんと10年契約。まるで、江戸から明治にかけて外国から学んだ順番通りで、日本の歴史のよう(笑)

それにしてもノットさんのエネルギッシュでパワフルな演奏は、気持ちがよく楽しい。エロースに溢れています。
彼は、東響を優れたオケにすることに純粋な悦びを感じているのが分かります。東響を愛しているのです。
指揮をすること、音楽を探求すること、聴衆に感動を与えることは、間違いなく彼の天職です。

 

 追記
FBの友人=長谷川さんからコメントが入り、二階席左から二番目に長谷川さんが写っていました(おお!ノットさんの延長に・笑)。
彼もBlogに批評を書いていました。長谷川さんは音楽批評家ですので、詳しいです。ぜひ、皆さまもご覧ください。

武田康弘


 

 

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