この二人に共通するのは、豊かな力があり、生命感に満ち、濃やかさニュアンスに富む愉悦の音楽であることです。オリジナルにして自信に満ちています。
わたしが、過去一番好きだった演奏がヨッフムでした。ノットの指揮は若々しく現代的ですが、ヨッフムと似ていて、自然と身体が動いてしまう嬉しさいっぱいのモーツァルトです。音も外面の輝きではなく、内からの明るさと美しさに溢れるものです。
実演でCDはありませんが、ノット・東響の先月の39番の交響曲、昨年12月のコジ・ファン・トゥッテ全曲は、共に最高の名演で、痺れて鳥肌が立ちっぱなしになりました。
理論や知識があって音楽があるのではなく、真っ直ぐに音楽があるのです。もうどうしようもなく音楽がいっぱい。生きた音楽を可能するために知があります。日本のクラシックにありがちな本末転倒の真面目ではなく、恋愛における真面目と同じで、エロースを基盤としますから、とても色気があり人間的魅力に溢れます。
そういえば、昨年のノットのブルックナー8番も最高!でしたが(ライブのSACDが出ました)その時もヨッフムを思い起こし、そう書きました。不思議なことに、ヨッフムもノットもバンベルク交響楽団の常任でした。なにか深い縁があるようです。
音楽は情熱であり愉悦であり心身の高揚です。ヨッフムはもうだいぶ前に亡くなりましたが、ノットは50歳代、元気溌剌で、まだ6年間も東京交響楽団で聴けます。六本木のサントリーホールで、川崎ミューザで、新宿のオペラハウスで。なんという幸せ。いま、東響の能力=音と技量も欧州の実力あるオケと同等です。
(ヨッフム・バンベルク響のモーツァルトの交響曲集 33.35.36.38 で39はない)
武田康弘