★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

枯木灘

2014-01-29 23:36:49 | 文学


二年生のための日本近代文学史の授業は、毎週本を一冊読んできてレポート提出するものだが、本はわたくしの方で勝手に決めている。毎年少しずつ変更しているけれども、今年は、全十二回のうちの最後のものを「芽むしり仔撃ち」の代わりに「枯木灘」にした。というわけで、最後の三冊が「仮面の告白」「箱男」「枯木灘」という、ブルックナーの第8番の最後の三音のように壮大な感じになった。で、「枯木灘」のレポートなんだが、案外よくできていた。「破戒」とか「芽むしり仔撃ち」が、下手すると、アドミッションポリシーみたいな人をしらけさせる文言を学生から引き出しかねないのに対し、「枯木灘」はそんなことを許さないのである。さすがである。秋幸の労働場面を学生が非常に美しく感じているらしいのもおもしろかった。