それを終了と心得ていた 2014-01-21 06:33:34 | 文学 しかし現金の綺麗に消費されてしまった後で、気がついたところで、どうする訳にも行かなかった。楽天的な彼はただ申し訳の返事を書いて、それを終了と心得ていた。ところが世間は自分のズボラに適当するように出来上っていないという事を、彼は津田の父から教えられなければならなかった。津田の父はいつまで経っても彼を責任者扱いにした。 同時に津田の財力には不相応と見えるくらいな立派な指輪がお延の指に輝き始めた。 ー夏目漱石「明暗」