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見沢知廉についてのインタービュー集である映画『天皇ごっこ』を観たのはいつだったか忘れたが、彼の小説『天皇ごっこ』に比べてだいぶ印象が違ったので記憶がある。
これに比べれば、宮台真司による新潮文庫の解説の方がなんとなく腑に落ちた。宮台氏が彼が言う「天皇主義者」化している時期の文章がかなり不安定な情緒で書かれているのが印象的だ。見沢のパッションとはこれは違うものだ。
小説に脚注がついているところからも分かるように、――そして、映画で雨宮処凛氏が言っていたように、ある種のオタク気質がある見沢氏は、大学の代わりに運動に最初から飛び込んでしまった高橋和巳みたいなところがある。
Children depend on their parents.
氏のお母さんが獄中からの手紙をせっせと清書していたことは有名なのだが、――氏の小説は内にあるものをはき出す感じで、どちらかというと書いているうちに考えてしまうタイプではなかった感じがする。実践というのは恐ろしいものである。書くことも同じ事であったはずだ。
三島由紀夫が余計なことをしたせいで、生きることがどういうことなのか分からなくなった人も多い。どうも氏もそんな感じがする。
Children depend on their parents.
これを、ちゃんと意識すればするほど、天皇に行き着くことはありうる。しかし、筆を親扱いにできないものか。90年代に氏の小説を読んだとき以来のわたくしの感想である。