いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。
誰がときめいているのか、誰がやむごとなき方なのか、この不安定さがたまらない。もっとも、ほんとうに不安定なのか、もしかしたら不安定さは仮面でもっと蔑視と奸策だけがあるのか。われわれの社会においては、象徴天皇制をとっていたとしても、かかる不思議な空間は終わらない。
「光る君へ」をみたら、天皇は人にあらずと激高している三島の気持ちが少しわかる。花山天皇の描き方は前代未聞のリアリズム?である。天皇を完全に人間にしてしまったら、形式上天皇を戴きながら、それを都合よく降ろすことが過剰な政治的意味のみを持つようになる。花山院の出家なんかは、花山天皇のキャラクターとどのように語られるべきなのであろう。
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズはあまり読んだことないかもしれない。さすがに一冊ぐらいは読んでるかもしれないが。。探偵小説は、犯人が単純に悪を示さないといけないし、現実社会はそうではないのはわかっていたとしても、そうではない部分が大きすぎるとどうなのか。
諸井誠の「赤い繭」(安部公房)って、半端に電子音楽してる気がしててなんかぴんとこなかったんだが、案外マーラーみたいなものが合ってる気もするのだ。わたしがこんなことを思うのも、安部公房が上の「そうではない部分」をどうあつかっているのかよくわからんために、もっといっそのことメロドラマ的であるべきではないかと思うからでもある。安部自身もたぶん気づいていてわりとメロドラマだ。