★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

「言ってやるがよい」話法

2010-11-05 02:30:59 | 文学
授業で黄表紙の話をしていて、頭にせりふの一つも浮かんでこなかったので反省した。梅暦も最後まで読んだかあやしいもんだし、一代女も果たして読んだかどうかあやしくなってきた。これではまともな授業はできないし、だいたい文学研究者として恥ずかしい限りだ。

それにしても読むべき本が多すぎる。

と、机の上にあった岩波文庫の「コーラン」を手にとってみると、神が神憑かったマホメットに「(やつらに)言ってやるがよい」というせりふを繰り返している。「聖書」の基督の言葉──「誠に汝らに告ぐ」より、神の言いたいことがよく分かるという意味では丁寧だ。なにしろ人間ではないところの神が直接言いたいことを言っている。そして思いあまって、異教徒の悪口をしゃべりまくる。私は「聖書」を読んでも神の実在について確信しなかったが、「コーラン」には確実にいる、神が。神憑りの人間に説教する、この方法を近代文学も採用した方がよいかもしれない。


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