メランコリア

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ブラックユーモア選集3『北京の秋』(早川書房)

2005-12-04 23:55:55 | 
ブラックユーモア選集3『北京の秋』(早川書房)
原題L'Automne a Pekin by Boris Vian
ボリス・ヴィアン/著 岡村孝一/訳
初版1976年 1200円

※2002.10~のノートよりメモを抜粋しました。
「作家別」カテゴリーに追加しました。

ブラックユーモアの先駆者とも言える著者の長編で
「北京も秋も関係ないからこのタイトルにした」という彼らしいコメント付き。

砂漠エグゾポタミーという、何もないゆえに神秘的魅力を持つ、どこともいえぬ異空間での群像劇。

表現のおもしろさに1行1行高速で読み進めるうち、1人1人のキャラクター設定のおもしろさ、
微妙な人間関係、意味のない仕事の数々、そして次々と冗談のように死んでゆく人々、
意外な展開、残された青年の絶望と未来の感動の余韻に包まれる。

しかも、登場する医師は、『うたかたの日々』のクロエを診察した同一人物とリンクするフシギな仕掛けのオマケ付き。


あらすじ(ネタバレ注意

後編になるにつれイヤな男と化すアマディス・デュデュは、
可笑しいくらいに朝の通勤バスに混雑や悪意のために乗れないで、
ついに会社まで歩いてしまうが、わざわざ始発地点まで引き返してw
余裕で乗ったら、狂った運転手と車掌のためにエグゾポタミーまでノンストップ。

後に黒人女と寝る世捨て人となるクロード・レオンは、上司に頼まれたピストルを購入
皆に気づかれないようにすればするほど焦って錯乱し、乱射事件を起こして牢屋で自殺にも失敗
プチジャン牧師のはからいでエグゾポタミーへ

明るくハンサムなアンヌと、彼にゾッコンの若く美人なロッシェル
ロッシェルを心から愛し、友人も憎めないアンジェル
アンヌが人を轢いて、その人の代わりに3人でエグゾポタミーへ行くことに

医師で模型飛行機マニアのマンジュマン教授は、パーツショップのクリュック氏に爆発的威力のエンジン入手を報告
インターンは椅子の高熱に気づき、ベッドをあてがうが、あまり手を焼かせるので注射を打って殺してしまう
アンジェルから砂漠なら飛行機が飛ばせると聞いた教授は、インターンとクリュック氏とともに
エグゾポタミーへ行くことに


すでに砂漠でずっと発掘作業をしている指揮者アタナゴール、助手マルタン・ラルディエ、
料理人の黒人デュポン、2人の兄弟と、美しい褐色の肌をしたキュイーブルがいる

アマディスは鉄道建設に入り、スタッフがそろい始める
工夫とその家族は船でやって来る
彼らの子どもディディッシュとオリーブ
10代にしては体つきのいいオリーブはキャプテンに乱暴されかけてディディッシュが守る


気の合うインテリな牧師と考古学者。
牧師は、多い数字をすべて3か、せいぜい4に直して祈るし、
ワインと間違えて石油をおごられても、気づかいを忘れず冷静な件が可笑しいw


鉄道が砂漠に1つしかない立派なホテルのど真ん中を通る計算で、
レストラン主人ピッポは激怒するが、アマディスの働きは委員会では讃えられる

アンジェルは、アンヌがロッシェルと毎晩寝ることで
彼女が崩れてゆく様子を見ていられないと嘆く


ついに模型飛行機の試運転の日!
しかし、その速度は目にも止まらぬほどで、インターンは手をえぐられて腐る病にかかるし、
レストランに突っ込んだ機体にピッポは頭を半分もぎ取られる

教授は殺した数が治した数を上回り、大嫌いな警察に連行されるのをきらい、
以前亡くしたクロエのことを気に病み、どのみち医師に嫌気がさしていたからこの地を去るという


神父と考古学者は、アンジェルとキュイーブルをくっつけようと謀り、
皆で世捨て人に会いに行く時、2人は抱き合う
アンヌはロッシェルと別れる決意をする

教授は、早速来た刑事から逃れて黒い帯の中に消える

皆で発掘現場に行く途中で、アンジェルはアンヌを突き落として殺してしまう
そして、それを聞いてふさぐロッシェルと話しているうちに睡眠薬を半分ずつ飲んで
心中しようと言いながらロッシェルだけを死なせてしまう


鉄道は完成し、試運転の日
アマディスと付き合っていたデュポンも乗って出発したら、
ちょうど発掘現場の上で、穴に落ち込み大事故となり
乗客は死んだが、教授とキュイーブルらは助かる

アンジェルは知っていたのに報せるのを忘れて神父と眺めていた

975番のバスでアンジェルは町へ戻ることに
見送る神父が言う

「あなたは、またお戻りになる。また近いうちに」

委員会は失敗した第一陣と同じ人数分を第二陣として送ることに決定
再び同じことが繰り返されたとしても、彼らにはあまり関心のないことなのだ



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