メランコリア

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ボリス・ヴィアン全集12『醜いやつらは皆殺し』(早川書房)

2005-12-13 23:55:55 | 
ボリス・ヴィアン全集12『醜いやつらは皆殺し』(早川書房)
原題Et on tuera tous les affreux by Boris Vian
ボリス・ヴィアン/著 長島良三/訳
初版1980年 980円

※2003.2~のノートよりメモを抜粋しました。
「作家別」カテゴリーに追加しました。

カバーもなくデカい袋に入れられて都立中央図書館からきた今作は、
ここ10年以上、誰も触ってなかったんじゃないかってくらいの雰囲気
でも中身はまるで江戸川乱歩の探偵シリーズみたく妖しくテンポよく冒険たっぷり
新聞小説だったらしく、どこを読んでもサービス満点な作り。

孤島でマッドドクターが美しい人工人間を作って、
すでにそのエリートらがアメリカ全土を支配していた、という具合だが、
投げやりといえなくもない主人公らの軽いノリと、国家レヴェルの問題なのに
乱チキパーティ風のエンディングなのが笑える。

ヴァーノン・サリヴァン名義の作品は『墓~』12万部、『死の色~』4万部、
本作3万5千部、『彼女~』7万部も売れ、ヴィアンが本気を入れた『うたかたの日々』の
3000部に比べたらすごい皮肉な状況。

訳者あとがきにあるように、最初からSF作家として売り出していたら人気作家になっていたかも・・・!?
でもやっぱりそこここに荒唐無稽で自由な言葉遊びがあるのはヴィアンらしくていいv


あらすじ(ネタバレ注意

ロッキーは、ロス大会で優勝したくらい見事な肉体美ながら、20歳まで童貞を守ろうとしている

クラブで親友で記者のゲイリー、女友達レイシー、ベリル、モナ、ダグラスの連れてきたサンデーラブらと踊って、
外に出、あやしいドラッグをかいで失神
気づくと実験室に裸で美人と一緒にされ、拒むと無理やり精子を盗られた

気づくと外に寝ていて、タクシードライバーのアンディが送ってくれた

クラブに戻ると、電話ボックスでヤクザのボス・ペトロシアンが毒殺されていて、
Gの友で警部補デファトの同行した救急車が攻撃される

GとRはPがなにか電話ボックスに隠し、それを奪い合う2つの組織があり
どっちかは実験とも関係があると推理し
見事にボックスから凄惨な手術の写真が見つかる
ここ1週間の間に行方不明になった女の子たちだろうか?

写真を返せと女コーラが訪ねてくる
彼女を失神させてバッグをとってくると、中には同じく手術の写真
彼女が誘拐犯か?

2人はこれから連れ去られようとしているメアリーを探し出し、ちょうどコーラが連れ去るのに尾行する
金持ちの淫乱娘を誘拐して実験し、外聞を気にする親は訴えられない

コーラと合流し、食事をしようとレストランに入って、仲間にのされる
彼らのアジトに着くと、アンディと甥のマイク、忠犬ヌーヌーに救われ、中を調べることに

地下に広がる施設で、人工人間の欠陥(ジェフと名づける)に会い、案内してもらうと
シュッツ博士が美しい人から種を集めて人工人間を作っていると知る

急速に成長する彼らは、瓜二つのもある、警備を担当するのもいる
アンディとマイクはFBIだと名乗り出て、怪しい博士を調べている

博士は不在で孤島へ引っ越したという
出発前にRは、とうとうサンデーラブに童貞を捧げる
以降、Rは女を抱き続け!
噂を聞きつけたベリルとモナが時間を惜しんで飛びつく始末

パラシュートで島に降り、裸の人工人間パーティに紛れ込み、途中、欠陥人間らの惨殺死体を見る
博士と対面し、実験のこと、Pが写真でボロ儲けしたこと、世界から醜い人間を抹殺する理想を語る

すでにアメリカ全土のスポーツ界、政界で活躍している人工人間たちのエリート、欠陥品は自殺してしまう
常に新しいDNAが必要なため、美しい男女で実験していた

「しかし世界中が美しい者だらけになったら映画を観に行く必要もなくなる」
「少数の醜い人間を残せばいい」
「皆醜いほうを選ぶようになる」

アンディは指揮官となり、海軍の美醜を人工人間に選ばせると、案の定、醜いほうがダントツ人気!
Rとマイクはもっと醜くならなければと思う




理想郷のはずが、美しさに飽きて、醜さを選ぶなんてことがあるかな?
皆このアンドロイドみたく本能の固まりみたいなら、人口増加の末、あまり天国とは言えないかも。
ヴィアンの女性観も見え隠れする。出てくる女は娼婦か、淫乱か、病気だし。
そのほうが小説はよく売れるのかw


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