TVのコメンテイターが「国会空転の責任は野党にある」或いは、財務次官のセクハラ事件について
「呼び出されて夜にノコノコ出ていく方にも責任がある」と話すのを違和感を持って聞いた。
しかも、御用評論家以外にも、そのコメントを支持する人間が少なからず居ることにも驚かされた。
それが「TV局の忖度」でないことを祈りたい。

(色付いて来た野山を眺めながら今日も代かき)
毎日新聞 余録 2018.4.26
論理クイズの本を見ていたら「決して逆らうことのできない命令がある。どんな命令か」という問いがあった。
答えは「この命令に従うな」である。逆らって従わぬようにすると、従ってしまうことになるからだ。
この命令、逆らうことも従うこともできない命令なのである(三浦俊彦(みうら・としひこ)著「論理パラドクス」)。
こうした矛盾の入り組む逆説の中に身を置いた状況をダブルバインド(二重拘束)と呼んだのが米国の精神医学者、
ベイトソンだった。
命令に従ったら怒られたといった理不尽(りふじん)な経験を重ねた子どもの精神疾患の研究から生まれた言葉だが、
さてこの「命令」はどうか。
相次ぐ政権と政府機関の疑惑や不祥事に「全容を明らかにし、うみを出す」との首相の言葉である。
ならば加計(かけ)文書が記す面会を「記憶にない」という元首相秘書官に証言を求め、さっさと真偽を明らかに
すればよかろうに与党は証人喚問に応じない。
「全容を明らかに」には「この命令には従うな」の拘束がかけられているらしい。
財務省で発覚した文書改ざんや口裏合わせ、事務次官のセクハラ辞任も新たな問題を次々に浮上させるだけで何一つ
決着しない。
セクハラにいたっては被害者たたき発言まで飛び出し、政官エリートの「うみ」を世界にさらけ出した。
真相の解明を「せよ」「するな」のはざまで堂々めぐりした森友・加計問題の1年だった。役人は忖度に忖度を
重ねて身を滅ぼし、この国の統治機構全体をおかしくした安倍政権のダブルバインドだ。