穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

Three私小説?

2011-02-16 23:29:26 | 芥川賞および直木賞

ところで、私小説は何て読む?普通はシショウセツだと思うんだが、西村氏はワタクシ・ショウセツとルビってるみたいなんだ。これはひとつのたくらみであり、アリバイであり、逃げ口上であるかもしれない。

お前たちの言っている私小説ではなくて、私小説なんだと。ネ。訂正;広辞苑をみたら同じ意味らしい。そしてワタクシ・ショウセツが正調らしい。テレビのアナウンサーはシショウセツと言うみたいだけどね。

西村氏の読書系図では田中英光とか藤沢修造に連なるらしいが、これが読めないので何とも言えないが(私が古本や図書館本を読まないことは再三述べたとおり)、この間書店で岩波文庫葛西善蔵をみた。

そこで、あまり無責任なこともブログで言えないから参考にするために買った。予想通り、西村氏とは無関係だ、読んだ側の感想だよ。西村氏はどう受け取っているかは知らない。

知られている「子を連れて」などまだ読めるがトーンというかムードはなんら西村氏との間に共通点はない。率直にいって文章も相当に稚拙だ。題材では家賃を払えなくて追い立てを食うというところは共通だ。貧乏物語だから、この辺は一緒ね。

ほかにはちょっと新刊本書店では私小説はないようだ。文学全集を置いているところではどうなんだろう。このごろはよほど大きな書店にいっても文学全集はあまり置いてないからな。


Two私小説?

2011-02-16 20:03:44 | 芥川賞および直木賞

もっとも、馬子にも衣装、じゃない、地下の成り上がりも成功して没落した名家の娘を箔付けに嫁にもらって二、三世代もすれば立派な紳士だ。いまや私小説は立派な市民権を獲得した。

まして、西村賢太氏は自分自身で私小説のラベルを貼って差別化をはかり、付加価値をつけている。このことにケチをつけるつもりはありません。

見事に成功している。拍手したい。文芸春秋三月号の芥川選評ではほとんどの選者が、そのまま私小説として言及している。大成功というべきであろう。

もっとも、その言及の仕方には島田雅彦氏を筆頭としてみょうちきりんなのが多いのも事実。次回以降はその辺を肴に。つづく(迷惑な話だろうね)


無意味な「私小説」ジャンル

2011-02-16 19:44:26 | 芥川賞および直木賞

文学とは、とか小説とはと問うことはある程度意味がある。哲学とはなにか、とか、真とは、善とは、美とは何か、と問うことがある程度の意義があるのと同様に。勿論コモンデノミネイターは無いのであるが。

しかし、文学と言う特定のジャンル、小説と言う二次ジャンル、さらにその下に「私小説」というジャンルを設けて私小説とは何か、と問うのは意味をなさない。

いつからこのような悪臭、いや悪習が出来たのか。小林秀雄という人物が事々しく言ったからなのか、いや田山花袋はIch Romanといっているから明治時代からだろうか。

もっとも、ドイツではこの言葉は教養小説という意味に用いられたと聞いたこともあるが、若きヴェルテルの悩み、のように。

私小説という用語は適切ではないが、もし定義をするならそれは内容ではなくて、以下に列挙する小説家の作品あるいはこれこれの作品は私小説である、というのを定義にしなければならない。すなわち私小説と言うのは列挙的に示す以外に方法はないのである。

そして、各人の意見が一致することも、また、ないであろう。つづく

&& 田山花袋であるが、彼が私小説なる語を使ったことはないのではなかろうか。これは文献学者に考究をおまかせするが、田山花袋が私小説と言う卑猥猥褻な用語を作るとは思われない。彼自身は地方の出身者らしいが、それでも明治の教養人である。私小説などと言うセンスのないことばを使うはずがない。

だから、訳さずにIch Romanと言っているのではなかろうか。


朝吹真理子「きことわ」

2011-02-11 18:17:17 | 芥川賞および直木賞

ここでも石原慎太郎氏の選評を引用しよう。作品の身体性がない、と彼は評する。このブログでも手法、テーマは見え見えだがそれを具現化、実体化する実力は中以下と書いた。作品の身体性とはほぼ同じことと理解する。

他の選者が異口同音に時間の処理のテクニックがうまいという。一致している。小説では手法、テーマがみえみえなのは欠点なのではありませんか。こんなところで選者の推薦の理由が一致するのは考えてみると気持ちが悪いね。

テクニックがみえみえでも、そんなことに関係なく迫力を持って訴えるならテクニック云々などは問題にはならないのだが、彼女の小説はどこかで異な匂いがするな、という程度。

描写にむらがあるというのも石原氏と同意見。もっとも、意識的にバリエイションをつけていると強弁されると処置なしなので黙っていましたが。

しかし、彼女の受賞は出版社の思惑が当たったのではありませんか。ポプラ社なみの効果は十分にありました。


批評権2400円分確保

2011-01-26 20:56:37 | 芥川賞および直木賞

当ブログで取り上げる本は二種類ある。古いのと新しいのである。

古いと言っても古本は、つまりセコハンは読まない。大体文庫本でしか手に入らないようなものばかりだ。単行本は取り上げない。当ブログでの例ではドストエフスキー、チャンドラー、ハメットなど

新しい本は単行本もある。取捨の基準は社会ネタかどうか、である。その観点から去年は村上春樹などを取り上げた。最近は書評家がベストテンだとか何だとか言っている本を大分取り上げた。これはごく最近のことでね。私も社会に遅れてはいけないと、社会現象的な本を取り上げた。

そのデンで、本日この間の芥川賞二作品をゲットした。昔は芥川賞の作品は文芸春秋に掲載された記憶があるので、雑誌を買おうかなと思っていた。作者の社会的話題性、ニュース性があるようなのでね、最近の当ブログの営業方針に沿って読んでみようかと考えておったのであるが、なんと、書店に当該作品がテンコ盛り。2400円也を払って批評権利をあがなった次第。

買った以上2400円分の悪口を書かねばなるまい。以下次号