穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

正調デカンショ節

2011-04-22 19:18:47 | 社会・経済

むかし、旧制高校の生徒が歌ったざれ歌がある。デカンショ節という。

>>デカンショ、デカンショで半年暮らす・・あとの半年寝て暮らす、だったかな。

デはデカルト、カンはカントそしてショはショーペンハウアーだ。哲学をやるならこれで間に合うということだ。最近書物のセンチメンタル・ジャーニーが哲学書にも及んで拾い読みしているが、まさにつぼをおさえているね。

この歌が明治に出来たのか、大正時代か知らないが昔の読書人、その卵である学生の適切な選択には驚く。

古代ギリシャ哲学や中世スコラ哲学がすでに精緻を極めた問題を、ことさらに新しい言葉で飾り立てたものが多い、書店に並ぶ現代哲学の本を出るそばから追いかけるのは大本を見失うおそれがある。


悪霊光文社文庫

2011-04-02 19:30:48 | ドストエフスキー書評

去年の9月に出たらしいからもう半年になるか。書店で気がついてドストの悪霊1(光文社文庫)を買った。三分冊になるらしい。まだ1しか出ていないようだ。

前に新潮文庫の改版が出たときには随分読みやすくなったな、と思ったが、今度の光文社のはさらに目にやさしい。

亀山郁夫氏のドスト新訳は三冊目だ。からまん棒(古いですね、分かりますか)のときはおや、とちょっと感心したが、二回目の罪と罰はなんだ、と思ったね。なんか大学院生の演習で訳させたものをつぎはぎしたようだと「憶測印象」を書いた。

こういうこともあるから、大学の先生の翻訳は読まないのだが、悪霊はかなりいい。もっとも、ロシア語は読めないから日本語としてということだ。

2と3も読んでみたい。亀山氏は読書ノート(解説)を読むのも楽しみだ。ドストの冗長性のだいご味に改めて感心した。晩年三作では一番油ののった筆ではないのかな、と思う。