今日は日曜日か、先週の月曜日の昼に何を食ったかな、といってもまず思い出せないだろう。大抵は昨日何を食ったかも思い出せないものだ。もっとも昨日食べたものが思い出せるのは消化不良の証拠であるが読書の場合はちょっと事情が異なる。
小説でもそうだ。この前はどこまで読んだかな、と思い出せるものはまず無い。数少ない例外を除いては。レイモンド・チャンドラーのミステリーは稀有の例である。昨日どこまで読んだかな、というのは彼の本を手に取っただけで本を開く前に思い出せる。
一方、読んでいてこれは次にこう展開するなということが想像できるのは駄作である。まして最初の部分を読んだだけで結末が予想できちゃうのは最低である。これがミステリー評価の二基準である。既読(過去)は容易に想起出来るが、展開(未来)は予測できない、というのが名作の条件である。以上 おわり