穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

結婚相談所

2024-04-27 07:14:07 | 書評

相変わらず辻村深月『傲慢と善良』126ページ。

婚活中の相手の女性がストーカーに付きまとわれて疾走もとい、失踪するという記述が延々と。

仄かに推測するに「ストーカーされて失踪」というのは胡散臭いがこの推測が当たるかどうかは辛抱して読まないとわからない。

驚くのは、読んでいて、現代の婚活事情である。昔からの結婚相談所からインターネットの婚活サイトまでの記述。三十代で婚活システムを利用したのがほとんどみんな百人くらいの相手と婚活しているというから驚くじゃないか。

主人公のプレイボーイらしい会社社長すら婚活相手は50人というから驚く。飯を食う暇もないじゃないか・

大体でこういう風俗を扱った小説では「数字の根拠である調査を巻末で表示するが、辻村さんは出典には触れない。本当かどうか不明だ。嘘八百にしても唖然とする数字だ。

この実態というか、婚活事情というのは本当なのかね。なんだか悲しいし、グルウミーでSF的だ。

主人公の女性も婚活していたので、ストーカーも婚活相手のなかににいるのではないかと、男が女の昔の婚活相手を虱探しに調べて、探して長い巡礼の旅に上るというのが筋らしい。やれやれ。

 


へへへ、、

2024-04-26 18:57:09 | 書評

へへへというのは照れ笑い。前回架という名前にルビかないといったが、もう一度最初から読んだらルビがついていた。西沢架(にしざわかける)という名前でした。

どうもそそっかしくてお恥ずかしい。なるほど、カケルならひねりはない。そうでもないか、やはり珍しいかもしれない。

 


ルビは誰が付けるのか

2024-04-26 15:21:05 | 書評

西村健太がどこかで言っていたが、ルビを付けるのは著者ではなくて編集者らしい。どうりでおかしいのが多い。つけなくていいのにつけたり、振らなければわからないのにつけなかったり。

入眠恐怖(入眠できない恐怖)を避けるために深夜読書のために辻村深月の{傲慢と善良}を買った。タイトルはイギリスの女流作家からパクってきたようだ。例によって帯によると映画化されてベストセラーだという。

この本でもルビに捧腹絶倒ものがオンパレードだ。主人公が「架」というらしい。こんな名前は見たことがない。それなのにルビが降っていない。男か女かもわからない。しばらく読んでいると男らしい。

そこで漢和辞典の名前読みを引くと「か、かける、かる」などの読みがある名前では「みつ」とよむとある。さすれば「みつ」と読むのであろう。しかし読んでいくうちに男であることがわかる。

そうすると、みつでは女みたいだ。作者というか出版社はなんとよませるのだろうか。

感心するのは読者が黙っていることだ。世界で一番扱いやすいのだろう。日本の読者は。

 

 

 

 

 

 


初期習作か

2024-04-20 14:12:39 | ミステリー書評

ロスマクの本を二、三冊まとめて買ったので捨てるまえに「象牙色の嘲笑」というのを読んだ。72ページ。読まずに捨てるのがおしいというさもしい理由だ。

ところがこれは初期の作品らしく、ハードボイルド風なのだ。そして結構出来がいい。チャンドラーをまねたのか、依頼人がゴジラみたいな女だ。すぐに死体が転がるのもハードボイル風だ。

叙述におかしなところもあるが、まあまあだ。ただ題名は彼の通弊で気取っていてどういう意味だか分からない。


絶筆宣言

2024-04-19 15:08:37 | ミステリー書評

絶筆宣言とは穏やかでないが(自分で書いてびっくりしているが)、ロスマグ(これはロスマクと略するのがただしいのかな)今途中まで、書いた彼の書評を中止するというだけのことだ。どうも、どうみても、書評する価値がない。

どこかのあとがきで村上春樹が好意的ともみられるコメントをしていたというのがあり、本屋で確認したが、村上の若書きならぬ若読み時代の感想で高い評価をしているのを確認して実に意外であった。しかし、どうも首肯できない。(象工場のハッピーエンド)

すくなくともハードボイルドの範疇には入らない。しいて言えば社会派の小説かな。少なくとも小説としての叙述の程度は低い。

なおハードボイルドをプライベートアイを中心とする犯罪ジャンルにまで、まげに曲げるならチャンドラー、ハメットとおなじかもね

 

 


夜覚めの読書

2024-04-15 23:59:16 | 書評

医者の睡眠論に「夜読書をすると眠れなくなる」というのがあるが、私の場合は「読むものがあればすこし読書をすると睡眠モードに移行する。例えばドストエフスキーの作品はそのようにして読み始めた。難しい文章のほうが頭が疲れるからか、睡眠に移行しやすい。読むに堪えない文章はそもそも読んでも始まらない。

眠気覚ましに興をもって読める作品が良書を見極める目安となる。その意味からするといまよんでいるロスマグの「さむけ」は落第である。今150ページくらいだが、どうしようもない感じになってきた。

なにか、はやりの精神分析を援用しているつもりか、力んでいるがどうしようもない。こういうのは現代の日本の小説にも多い。小説でも「心理学」を援用しているのが多い。勘弁してくれよ。

 


ロスマグ再評価

2024-04-14 18:12:35 | ハードボイルド

かってはハードボイルドの御三家ということが言われた。もちろん筆頭にチャンドラー、ハメットと続き、ロス・マクドナルドと続く。

ロスマグは一寸格が落ちる。むかしロスマグも読んだが、スピード感がなく退屈であるといいうのが、一般的な見方で、最近ではあまりロスマグのことを取り上げる人がいない。私もそういう印象であったが、最近読むものが無くなってロスマグの代表作の一つ「さむけ」を立ち読みした。結構読みやすそうなので買って20ぺーじほど読んだ。昔の印象と違って結構読めることを発見した。「さむけ」だけに限ったものかもしれないが。

インターネットのブラウザーで(素人書評)を読むと退屈でつまらないというのが現在でも主流らしいが。まだ20ページしか読んでいないが、昔とだいぶ違って軽い文章の印象なので先を読んでみることにした。

ほかの作品も二、三読んだが、題名は覚えていない。「さむけ」は読まなかったのかもしれない。

 

1976年第一刷とあるから新訳ではないようだが、結構スピード感が

 


名物に旨いもの無し

2024-04-07 17:22:48 | 小説みたいなもの

ワシントン・アーヴィングのアルハンブラ物語を買った。著者の文章は高校の教科書にも掲載され名文家として明治時代から日本では名高いそうである。アラブのイベリア半島支配の最後の拠点として豪華華麗な宮殿として知られる。

前から一度読んでみたいと思ったが、市販されていない。それが先日光文社古典文庫の翻訳があったので期待して買った。これもこの本を取り巻く惹句がすごいので一度は現地に行きたいと思った。スペインを旅行した時にはいこうと思ったがスケジュールのやりくりがつかず断念したことがある。

そんなこんなで、つい手を出してしまった(買ってしまった)。読んでみて期待外れで旅行記としては平板な叙述であった。ま、名物に旨いもの無しかな。

どうも最近興味ある本に巡り合えない。読書日照りというところだ。

 


ドスト「ステパンチェコヴォ村の住人」

2024-04-01 16:56:10 | 書評

ようやっと読み終わった。ひどい作品で、書評を書く気もなかったが、訳者や出版社の褒め方が、言いぐさがひどいので誤解を避けるためにも、やはり一言言っておいたほうがいいのかな、と思ったのでちょっと触れる。

要約すればドストの作品としてはひどいの一言に尽きる。着想、キャラ建はいいのだが、作品としては最低である。

出版社や翻訳者の惹句はすざましいのだが、まあ、30点だろう、ドストの作品の平均点が75点とすれば、25点くらいかもしれない。

訳者の解説に丸谷才一がドストの作品ではこれがいいといったと紹介しているが、本当に丸谷がいっているなら、ひどい話だ。こんなに褒めて恥ずかしくないのかな。

ほんちょっと後の作品で「死の家の記録」という良い作品があるが、それとの比較にもならない。