童子の茶碗の色を塗り始めたが、しょっぱなから色を間違えた。九谷焼の絵の具は、緑は茶のような色だし、黄色灰色に見えるし、とにかく絵の具を溶いたガラス版に書いてあるラベルに頼るしかない。
塗りすすむごとに不安は増していく。スケッチブックに塗った色の通りになるとは限らない。
とにかく緑を塗ったあと、並べたら5客はまるで5人並んだ弓引き、昇段審査のような気がした。
先生の工房の窓からは秋の木々が見える。
弓を引いていて、なかなか満足のいく矢が出ないのと同様、絵付けの線一本も、満足に引けないのである。なんと引くことは難しいか。そう言えば、高い買い物をした時も、なかなか値段を引いてもらえない。簡単に引くのは、亭主の駄洒落くらいだ。