前原外務大臣の辞任、細川厚生労働大臣の年金問題の無責任発言などで、菅政権が崖っ縁となった3月9日(水)、BSフジ・プライムニュースで「民主党はどうなるか」をテーマに、民主党国対委員長代行の斎藤勁氏、同国民運動本部長の渡辺周氏と私、そして河野勝早大教授をゲストに議論した。
生放送だったのでご覧になった方もいると思うが、重要な問題もあったので、番組の中で言い足りなかったことを中心に、まずは補足しておきたい。
■土肥政倫審会長の竹島領有権主張中止の行動
菅首相の側近であり、衆議院政治倫理審査会会長の土肥隆一氏が、「日韓キリスト教議員連盟」の会合で、日本政府に竹島の領有権主張の中止を求める共同宣言に賛同し、名前を載せていることが番組の始まる直前に報道され冒頭にこの問題が話題となった。
意見を求められた私が「昨年暮れから心配していたことが起こった」と発言したところ、出席者一同「何事か」と緊張した。実は、昨年暮れに小沢元代表の政倫審への出席について、民主党内で紛糾し菅首相や岡田幹事長が狂ったように小沢氏を引っ張り出そうとした場面があった。その時、不可解な動きをしたのが、この土肥政倫審会長であった。
政倫審会長といえば、議長職を終えた大物政治家が就く職責としてつくられた制度であり、党派を超えた見識で職務を行うことが大前提だが、土肥会長の言動には、菅首相や岡田幹事長の手先となり小沢氏を追い落とそうというものを感じた。私は牧師という聖職者のイメージとは異なる胡散臭さを嗅ぎとり、土肥氏の背後を調査してみた。
土肥会長は昨年9月の民主党代表選挙で菅氏を支持し、兵庫県下で「刑事被告人の小沢氏を代表にしてはならない」と、事実と異なる悪質なアジ演説をしたことで知られていた。その原因は何だろうというのが私の知りたいところであった。わかったことは、土肥氏には牧師としてのボスがいて、それは米国籍韓国人の女性で、米国議会のロビイストということだ。当然のこととして諜報機関とのつながりも推測できる。
その女性牧師がしばしば訪日して布教活動をしており、ことさら小沢一郎氏の「政治とカネ」を厳しく批判しているとのこと。事実に基づかない大手マスコミの捏造記事を中心に誹謗中傷を繰り返していたことがわかった。国際的な思惑もあると思うが、異常なことである。
こういう人物を師とする土肥氏の実態を知り、竹島の領土帰属について問題の言動があり得ると私は予知していたのである。小沢氏の政倫審出頭を強圧的に行うなら、これらの情報を公表するつもりであったが、そこまでには至らなかった。問題発生後の土肥氏の言い分けが無責任きわまりなく、菅政権の性格丸出しだ。政治倫理とは「金と女」だけのことではない。国家主権に対する政治家の基本認識のことをいうのである。
■前原外務大臣の辞任の背景
BSフジ・プライムニュースで取り上げた次のテーマは、突然の前原外相の辞任問題であった。「泥舟から逃げた」との話が大勢となる中で私は、次のように背景を説明した。
これにはいくらかの責任が菅首相にある。専門家の情報によれば、「2月初旬の北方領土返還国民大会で菅首相がロシア大統領の訪島を"歴史的暴挙"と批判した。これをやらせたのは某団体で、裏には自民党との提携の橋渡しをしてやるとの話があったようだ。ところが菅発言が波紋を呼び、前原外相が火消し役となる。その影響で前原外相の政治資金パーティーの購入者の届けが虚偽であり、実際は暴力団のフロント企業であったと報道された。
ところが参議院予算委員会で本格的に採りあげられる前に、在日外国人による違法な政治献金が発覚し、突然の外相辞任となった。前原氏にとっては菅政権という「泥舟からの逃亡」ではなく、絶好の保身のための辞任であった。この機会に辞任していなければ、フロント企業との関係、さらに新たな在日建設業者との問題が発覚していたとの情報もあった。そうなれば、政治生命が完全にたたれるという事態の可能性があったのだ。
■民主党に何を望むか!
3番目のテーマは「民主党に何を望むか」であった。私は50年間、政治の世界に生き約5千人の国会議員を観察してきた経験を体して、次のように述べておいた。
平成12年4月の森自公政権以来、わが国の議会民主政治の劣化が目立ち始めた。一昨年の夏には歴史的政権交代が行われ、国民の民主党に対する期待は大きかった。それは議会政治に対する期待でもあった。
鳩山政権の失政で菅政権となったが、政権交代の原点である、「国民の生活が第一」を踏みにじり、政治運営も国民からの信頼を失う異質なものを展開し、政権担当能力のないことを露呈した。根本原因は政権交代スタートのときから、小沢一郎という政権担当経験者を排除したことにある。これからの民主党に望むことは、「政権交代の原点に戻れ、戻れなければその志のある人間で新党を結成すべし」ということであった。
■菅首相の違法献金と巨大地震の発生
朝日新聞の3月11日朝刊(都内版)は、「菅首相に違法献金の疑い、在日韓国人から、「首相側未回答」と、衝撃的特ダネ報道を行った。これで来週にも退陣かと、NHKの参議院決算委員会の中継を横目に、このメルマガを執筆していた。
ところが、午後2時46分頃、巨大地震が発生した。私の書斎は2階にあり、ここに置いてある本棚から一斉に本が飛び出し、部屋中が書物や資料で溢れてしまった。
時間が経つにつれ、観測史上最大の巨大地震で東北地方は想像を絶する被害となった。被災者や被災地の皆さんには、心からお見舞い申し上げる。思えば大正12年9月1日の関東大震災は、同年8月24日に加藤友三郎首相が逝去し、山本権兵衛に大命が下り組閣準備中のときであった。この非常事態に組閣の遅延は許されず、9月2日に赤坂離宮の天幕の中で親任式が行われた歴史が残っている。
さて、この巨大地震で政局はどうなるであろうか。まずは、菅内閣のもとで与野党協力して、緊急な地震被害対策に全力を尽くすべきである。緊急対応が終わった後、巨大震災が与える社会・経済などの影響を政治がどのように対応していくかが問題となる。菅政権の統治能力ではその問題を解決できないと、私は思う。
巨大災害は人間の発想も変える。国民に信頼されない政権ではこの難関を解決できない。「国民の生活が第一」を基本理念とし、「共生社会」を創造する志のある政治勢力を結集した「救国連立政権」を成立させなばならない。衆議院の解散は当分できる事態ではない。
巨大地震は、わが国の政治・経済・社会などに、これまでのあり方でよいのかとの警告を、天道が発したものといえる。弱肉強食の経済成長を競うのでなく、国民の幸せを成長させる政治に変えろと・・・。
すべてのテレビ局は巨大地震報道で埋め尽くされている。画面が伝えるその惨状を見るにつけ、この後処理こそ真っ当な政治の出番であると強く思うのは私一人ではあるまい。当面は一人でも多くの方の生命を守ること。そして、次に待つのは国民が安穏に暮らせる国土の再建である。「日本一新の会」の役割はひとしお大きくなった。