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浅野秀弥の未来創案
【大阪人の不安感】
2016年8月4日大阪日々新聞
お維ですべて解消か?
今回の参院選まで、新党はネコの目のように離合集散して浮かんでは消えたが、お維はこれらのにわか新党と明らかに一線を画している。それは、俗に言われるブーム的な追い風に乗って国政の議席を一時的に占めるだけでなく、特に大阪では府市町村の自治体首長から地方議員まで足腰をじっくり固めている点だ。
自民や民進など既存政党に所属していた地方議員が、ステップアップしようとして党幹部に相手にされなかった際にお維の人気に目を付け転身してくるケースも目に付く。
自民党は陰では自分党と言われ、1人1党の気質が古くからある。国会議員を頂点に府議市議らのピラミッド型利権組織形成も巧みだ。元々自民党出身者が多く中枢を占めるお維は、実は最も古い組織構築を確実に進めている。
大阪でのお維は、自公政府与党両党の補完勢力には留まらない。「ウソも100回言い続けると、本当になる」ということわざがあるが、大阪の有権者は「橋下・松井両氏なら、自公与党や前政権の流れをくむ民進党ではできなかった真の行財政改革をお維ならきっとやってくれる」と信じて1票を投じている。「ひさしを貸して母屋取られる」というたとえもある。既存政党は新党ブームとお維を同等に甘く見てはならない。
有権者は自己のさまざまな期待感を新党に投影して投票行動に結び付ける。そしてそれが裏切られて失望し、また元の既存政党に仕方なく回帰する。しかしお維をいろいろ分析してみると、その手法への理解が次第に深まり、組織基盤も関西に限ってだが、確実に浸透している。
実際には魔法のようにたちどころに何もかも変えてしまう“幸せの青い鳥”などどこにもいない。民主主義は時間と手間が掛かり、一朝一夕で改革はできず、息の長い取り組みが必要だ。
かつて大大阪と呼ばれた商都が、東京から水をあけられて久しい。大阪人のいらだちと焦りは頂点に達している。そこにお維の台頭するスキが生まれる。覆水盆に返らずで、高度経済成長日本や大阪万博時代には戻ることはない現実を直視すべきだ。
あさの・ひでや(フリーマーケット=FM=社社長、関西学生発イノベーション創出協議会=KSIA=理事長)1954年大阪市生まれ。わが国のFM創始者で日本FM協会理事長。関西経済同友会幹事。数々の博覧会等イベントプロデュースを手掛ける。