時事通信 8月8日(月)15時22分配信
「象徴としてのお務めについて」の天皇陛下お言葉の要旨は以下の通り。
80歳を越え、体力面などから制約を覚えることもあり、ここ数年、天皇としての歩みを振り返り、この先の在り方や務めに思いを致すようになった。社会の高齢化が進む中、天皇が高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか、個人として考えてきたことを話したい。
即位以来、国事行為とともに、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を日々模索してきた。伝統の継承者としての責任に深く思いを致し、日本の皇室がいかに伝統を現代に生かし、いきいきとして社会に内在し、人々の期待に応えるかを考えつつ、今日に至る。
二度の外科手術を受け、高齢による体力低下を覚えるようになってから、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処すことが国や国民、皇族にとって良いことか考えるようになった。幸い健康とはいえ、次第に進む身体の衰えを考慮すると、これまでのように全身全霊で象徴の務めを果たすことが難しくなると案じている。
天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えてきたが、同時に、時として人々の傍らに立ち、声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切と考えてきた。天皇が象徴であるとともに、国民統合の象徴としての役割を果たすには、国民に象徴の立場への理解を求めるとともに、天皇も国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を育てる必要を感じる。こうした意味で、日本各地への旅も、天皇の象徴的行為として大切なものと感じてきた。
天皇の高齢化に伴う対処が、国事行為や象徴としての行為を縮小していくことでは無理がある。摂政を置く場合も、十分に務めを果たせぬまま、天皇であり続けることに変わりはない。
天皇が健康を損ない、深刻な状態に至った場合、社会が停滞し、国民の暮らしにもさまざまな影響が及ぶことが懸念される。天皇の終焉(しゅうえん)に当たり、重い殯(もがり)の行事がほぼ2カ月にわたり、葬儀に関連する行事が1年間続く。新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は非常に厳しい状況に置かれる。こうした事態を避けられないかとの思いが胸に去来することもある。
長い天皇の歴史を振り返りつつ、今後も皇室が国民と共にあって国の未来を築き、象徴天皇の務めが安定的に続くことを念じ、気持ちを話した。国民の理解が得られることを切に願っている。
最終更新:8月8日(月)15時22分