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自国の経済発展を追求 2025年、3兆円効果が日本の〝復活〟を牽引へ
万博未来考 第2部(5)
2024/4/10 07:00
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井上 浩平
2025年大阪・関西万博
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1970年大阪万博をきっかけに開通した北大阪急行電鉄。ほかにも多くのインフラが整備された=70年2月24日、大阪府吹田市の旧万国博中央口駅付近
人類や文明の輝かしい将来像を示す万博の理念は崇高だ。その理想とは裏腹に、国家は自国の経済発展という果実をも貪欲に追求する。万博の実像は今も変わらない。
「万国博覧会は(中略)世界と開催国の社会や経済に与える波及効果の大きさでも、最大の行事である」。旧通商産業省の官僚として1970(昭和45)年大阪万博の企画立案を担い、2025年大阪・関西万博の実現にも尽力した作家の堺屋太一氏は、著書『地上最大の行事 万国博覧会』でこうつづる。
堺屋氏は70年万博を「非常にうまくいった」と評価。共著の『私の関西経済論』では、厳格な予算管理を成果として挙げた。
会場の場所や広さも決まっていなかった段階で、過去の開催例などから弾き出した予算額は、実際にかかった金額に近いものに。万博運営組織において、本番までの施設の設計・建設、人員配置などを綿密に総合調整する仕組みを構築できたことが大きかった。
会場建設費が当初の1250億円から最大2350億円まで増え、予算の膨張が続く2025年万博のマネジメントとは異なる様相が浮かぶ。
万博を成功させるには、必要なお金を十分に使って運営し、国家や地域を発展させるという〝理念〟をいかに官民で共有できるかがカギとなる。
1970年万博では経済界が大きな役割を果たした。政府予算の少なさに業を煮やした日本万国博覧会協会会長の石坂泰三・経団連会長は佐藤栄作首相に直談判。国は要求の95%を認めた。
「(万博を)何としても成功させたかった。功名心などからではない。成長した日本経済の姿を国の内外に堂々と展示したいとの一念」だった(城山三郎『もう、きみには頼まない』)。
万博は大阪の都市開発を加速させ、新御堂筋や大阪外環状線など、今も生活や経済を支える道路網の骨格ができた。経済効果は巨大なものになったとされる。
一方の2025年万博。開催に合わせる形で、やはりインフラ整備や再開発が進む。会場の人工島、夢洲(ゆめしま)(大阪市)へは大阪メトロ中央線が延伸。今年9月に先行まちびらきするJR大阪駅北側の「うめきた2期(グラングリーン大阪)」では25年春ごろ、オフィスや商業施設、国際会議や展示会を開くMICE(マイス)施設がオープンする。
訪日客の増加を見越し、外資系の高級ホテルの開業なども相次ぐ。経済産業省の試算では、万博の経済波及効果は約2兆9千億円となる。
重要なのは、万博の効果を経済の持続的な成長へつなげることだ。
大阪万博の期間の大部分が重なる70年度、関西経済の全国に占めるシェアは19・3%とピークに達した。しかし、その後低下し、近年は15%台で低迷。「東京一極集中が進んだ」。日本総合研究所関西経済研究センターの藤山光雄所長はこう指摘する。
2025年万博は大阪・関西を復活させられるのか。東京と大阪を両輪の牽引(けんいん)役として日本経済全体を力強い成長軌道に乗せられれば、国家の利益にもかなうことになる。(肩書は当時)
=第2部おわり