昨日(2023年2月14日)、厚生労働大臣諮問機関・労働政策審議会の労働条件分科会が開催。議題は「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱」等について(諮問)など。
労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱
公開された資料「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱(概要)」によると、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)に次のような内容が追加されることになる。
(1)無期転換ルール及び労働契約関係の明確化について
・労働基準法第15条第1項前段に基づく労働条件
明示事項に、通算契約期間または有期労働契約の更新回数の上限並びに就業場所・業務の変更の範囲を追加。
・無期転換申込権が発生する契約更新時における法第15条第1項前段に基づく労働条件明示事項に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件を追加。
・無期転換後の労働条件を明示する際には、労働契約の締結時に書面の交付等の方法により明示することとされている事項については、書面の交付等の方法により明示すること。
(2)裁量労働制について
(対象労働者の要件)
・企画業務型裁量労働制について、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明を行うことを決議事項に追加。
(本人同意・同意の撤回)
・専門業務型裁量労働制ついて、本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないことを協定事項に追加。
・専門型裁量労働制および企画型裁量労働制について、同意の撤回の手続を協定事項及び決議事項に追加。
(労使委員会の実効性向上)
・企画型裁量労働制について、使用者が労使委員会に対象労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度の内容について説明することに関する事項を労使委員会の運営規程に追加。
・企画型裁量労働制について、労使委員会が制度の実施状況の把握および運用の改善等を行うことに関する事項を労使委員会の運営規程に追加。
・労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とすることを労使委員会の運営規程に定めることとするとともに、労使委員会の労働者代表委員の選出手続の適正化を図る。
・労使委員会の労働者代表委員が労使委員会の決議等に関する事務を円滑に遂行することができるよう、使用者は必要な配慮を行わなければならない。労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則における労働時間等設定改善委員会においても同様の改正を行う。
(行政の関与・記録の保存等)
・6か月以内ごとに行うこととされている企画型裁量労働制の定期報告の頻度を初回は6か月以内に1回およびその後1年以内ごとに1回とする。
・専門型裁量労働制・企画型裁量労働制ともに、健康・福祉確保措置の実施状況等に関する労働者ごとの記録を作成し、保存する。
・その他所要の改正を行う。
なお、「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令」の施行期日は2024年(令和6年)4月1日の予定とされている。
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する件案
資料「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する件案(概要)」によると、改正の概要は次のとおり。
(1)使用者は、有期労働契約の締結後、当該有期労働契約の変更または更新に際して、通算契約期間または有期労働契約の更新回数について、上限を定め、またはこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならない。
(2)使用者は、労働基準法第15条第1項の規定により、労働者に対して無期転換後の労働条件を明示する場合においては、当該労働条件に関する定めをするにあたって労働契約法第3条第2項の規定の趣旨を踏ま えて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければならない。
(3)その他、上記の改正に伴う題名の変更および所要の規定の整理を行う。
なお、適用期日は2024年(令和6年)4月1日の予定とされている。
労働基準法第三十八条の四第一項の規定により同項第一号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第二十四条の二の二第二項第六号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示案
資料「労働基準法第三十八条の四第一項の規定により同項第一号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第二十四条の二の二第二項第六号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示案(概要)」によると、改正の概要は次のとおり。
(1)労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針について、企画業務型裁量労働制に係る改正
(対象労働者の要件)
・対象労働者を定めるにあたっての適切な協議を促すため、使用者が当該事業場における労働者の賃金水準を労使協議の当事者に示すことが望ましいことに留意することが必要であることを示す。
・対象労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度を変更しようとする場合に、使用者が労使委員会に対し、事前に変更内容について説明を行うこと が適当であることに留意することが必要であることを示す。
(本人同意・同意の撤回)
・本人同意を得る際に、使用者が労働者に対し制度概要等について明示した上で説明することが適当であること等に留意することが必要であることを示す。
・同意の撤回の手続を決議するに際しては、申出先の部署等を明らかにする必要があること、および同意の撤回を理由として不利益取扱いをしてはならないことを示すとともに、撤回後の配置や処遇等についてあらかじめ決議で定めることが望ましい ことに留意することが必要であることを示す。
(裁量の確保)
・裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを示す。
・労働者から時間配分の決定等に関する裁量が失われたと認められる場合には、労働時間のみなしの効果は生じないものであることに留意することが必要であることを示す。
(健康・福祉確保措置)
・「労働時間の状況」の概念およびその把握方法が労働安全衛生法と同一のものであることを示す。
・健康・福祉確保措置の内容に、勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)、一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導を追加し、決議することを示す。
・健康・福祉確保措置の内容を「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」に分類した上で、それぞれから1つずつ以上を実施することが望ましいことに留意することが必要であることを示す。
・健康・福祉確保措置として、対象労働者の勤務状況およびその健康状態を踏まえ、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)を決議することが望ましいことに留意することが必要であることを示す。
・健康・福祉確保措置の結果を踏まえ、特定の対象労働者に制度を適用しないこと とする場合における、配置および処遇またはその決定方法について、あらかじめ決議で定めておくことが望ましいことに留意することが必要であることを示す。
(みなし労働時間の設定と処遇の確保)
・みなし労働時間について決議するにあたっては、対象業務の内容、対象労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度を考慮して適切な水準とし、相応の処遇を確保する必要があることを示す。
(労使委員会の実効性向上)
・委員の半数以上からの申出があった場合に限らず、制度の実施状況等について定期的に調査審議するために必要がある場合には、労使委員会を開催する必要があることに留意することが必要であることを示す。
・労使委員会に求められる役割として、労使委員会においては、決議の内容が指針の内容に適合するようにするとともに、決議の有効期間中も、定期的に制度の実施状況に関する情報を把握し、対象労働者の働き方や処遇が制度の趣旨に沿ったものとなっているかを調査審議し、必要に応じて、運用の改善を図ることや決議の内容について見直しを行うことが求められることを示す。また、委員は労使委員会がこうした役割を担うことに留意することが必要であることを示す。
・使用者は、過半数代表者が必要な手続を円滑に実施できるよう十分に話し合い、必要な配慮を行うことが適当であることを示す。
・過半数代表者が適正に選出されていない場合等には、労使委員会による決議は無効になること、および労使を代表する委員それぞれ1名計2名で構成される委員会は労使委員会として認められないことを示す。
・使用者および委員は、対象労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項を運営規程に定めるにあたっては、使用者からの説明は、決議に先立って行う必要があることに留意することが必要であることを示す。
・制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項を運営規程に定めるにあたっては、対象労働者の働き方や処遇が制度の趣旨に沿ったものとなっているかを労使委員会で調査審議し、運用の改善を図ることや決議の内容について必要な見直しを行うことが必要であること等を踏まえ、使用者および委員は、制度の実施状況の把握の頻度や方法を運営規程に定める必要があることに留意することが必要であることを示す。
・労使委員会の委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するため、使用者は、対象労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度の運用状況を開示することが適当であることに留意することが必要であることを示す。
(苦情処理措置)
・労使委員会が苦情の内容を確実に把握できるようにすることや、苦情に至らないような運用上の問題点についても幅広く相談できる体制を整備することが望まし いことに留意することが必要であることを示す。
・苦情処理措置に関して、使用者は、労働者から制度の適用に関する同意を得るにあたって、苦情の申出先や苦情の申出方法等を書面で明示する等、具体的内容を説明することが適当であることに留意することが必要であることを示す。
・その他所要の改正を行う。
(2)労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務についての改正
・銀行または証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査または分析およびこれに基づく合併および買収に関する考案および助言をする業務について専門業務型裁量労働制の対象とする。
なお、適用期日は2024年(令和6)年4月1日の予定とされている。
第188回 労働政策審議会 労働条件分科会 資料(厚生労働省サイト)
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