本日取り上げるのは白人ギタリスト、ジョー・パスが1970年に発表した「インターコンチネンタル」です。1960年代に遅咲きの天才ギタリストとして登場し、「コール・ミー」「フォー・ジャンゴ」などの名盤を発表した彼ですが、その後は人気が逆に災いしてボサノバやポップス曲を取り上げた売れ線狙いのアルバムが続きました。当時はモダンジャズそのものが行き詰まり、方向性を模索していた時代ですからそれも仕方ありません。
そんな中で発表された「インターコンチネンタル」はパスのギターの妙技を、ベースとドラムというシンプルなトリオで表現したストレートアヘッドな作品。録音したのはドイツのMPSというレーベルで、本場アメリカのジャズシーンがやれフリーだのやれ新主流派だのやれフュージョンだのと激動期を迎える中でひたすらオーソドックスなジャズを録音し続けたことで知られています。オスカー・ピーターソンの諸作品が特に有名ですね。他にハンプトン・ホーズ、レッド・ガーランド、デクスター・ゴードンらも作品を残しています。
曲は全10曲で歌モノスタンダードから、ボサノバ“Meditation”、フレンチポップス“Watch What Happens”、ベイシーナンバー“Lil' Darlin”、パスのオリジナル“Joe's Blues”、果ては当時のヒット曲“Ode To Billie Joe”まで多種多様ですが、どれも奇を衒わないアレンジでパスの温かみのあるギタープレイが心ゆくまで味わえます。個人的お薦めは冒頭のスタンダード“Chloe”、そして「シェルブールの雨傘」の収録曲“Watch What Happens”ですね。この曲はウェス・モンゴメリーのバージョンも有名ですから聴き比べてみるのもいいかもしれません。共演はベースがドイツ人のエバーハルト・ウェーバー、ドラムがイギリス人のケニー・クレアです。2人ともあまりよく知りませんが堅実なプレーでパスを盛り立てています。