さて、アーマッド・ジャマルと言えば1958年に発表されたライブ作「バット・ノット・フォー・ミー」がモダンジャズのベストセラーとしてあまりにも有名です。ジャマル自身がオーナーだったシカゴのジャズクラブ“アルハンブラ”でのライブ録音である本作はその弟分とでもいうべき作品で、メンバーもジャマル、イスラエル・クロスビー(ベース)、ヴァーネル・フォーニア(ドラム)と全く一緒ですし、リラックスした上品なピアノトリオというコンセプトも一緒です。正直ここにはホレス・シルヴァーの熱きグルーブも、ウィントン・ケリーの抜群のドライブ感覚も、ビル・エヴァンスの研ぎ澄まされたリリシズムもありません。ただ、冒頭“We Kiss In A Shadow”の輝くばかりのピアノソロを聞けば誰でも思わず「いいね!」と口に出さずにはおれないでしょう。それ以外も全編に渡って肩の力の抜けた軽妙なトリオ演奏がつまっています。中でも独特のリズム進行の“The Party's Over”、2分半の短さに美しさが凝縮された“Snow Fall”がお薦めです。ナイトクラブの夜景を写したジャケットもお洒落ですね。
さて、アーマッド・ジャマルと言えば1958年に発表されたライブ作「バット・ノット・フォー・ミー」がモダンジャズのベストセラーとしてあまりにも有名です。ジャマル自身がオーナーだったシカゴのジャズクラブ“アルハンブラ”でのライブ録音である本作はその弟分とでもいうべき作品で、メンバーもジャマル、イスラエル・クロスビー(ベース)、ヴァーネル・フォーニア(ドラム)と全く一緒ですし、リラックスした上品なピアノトリオというコンセプトも一緒です。正直ここにはホレス・シルヴァーの熱きグルーブも、ウィントン・ケリーの抜群のドライブ感覚も、ビル・エヴァンスの研ぎ澄まされたリリシズムもありません。ただ、冒頭“We Kiss In A Shadow”の輝くばかりのピアノソロを聞けば誰でも思わず「いいね!」と口に出さずにはおれないでしょう。それ以外も全編に渡って肩の力の抜けた軽妙なトリオ演奏がつまっています。中でも独特のリズム進行の“The Party's Over”、2分半の短さに美しさが凝縮された“Snow Fall”がお薦めです。ナイトクラブの夜景を写したジャケットもお洒落ですね。
全8曲、スタンダードは“Like Someone In Love”のみで、後は聴き馴染みのない曲ばかりですがなかなか良い曲が揃っています。個人的イチ押しはアール・ジンダース作曲の“Soiree”。非常に美しいメロディを持った名曲で、エヴァンスはフェンダーローズとアコースティックを絶妙に使い分けて幻想的なムードを作り上げます。アレンジャーでもあるミッキー・レナードが作曲した“I'm All Smiles”“Why Did I Choose You?”もストリングスを効果的に使った美しいナンバーで、このあたりの曲は電子音が入るというだけでいかにもエヴァンスらしい耽美的な曲想です。ただ、2バージョンある“The Dolphin”は普段のイメージとはかけ離れた陽気なボサノバ。アコギが作り出すブラジリアンなリズムに乗って、エヴァンスが軽快にソロを取ります。ラストの自作曲“Children's Play Song”も子供の遊び声をバックに取り入れたハートウォーミングな曲調。1970年と言えば、モダンジャズが行き詰り、フュージョンが主流になりつつあった時代。そんな中でエヴァンスも方向性を模索していたのでしょうか?結局その後のエヴァンスはフュージョン路線を歩むわけでもなく、80年に亡くなるまで変わらずオーソドックスなスタイルのジャズを演奏し続けますが、本作は単なる一時の気まぐれと切って捨てるには惜しい魅力的な楽曲集だと思います。
前回「ジャズ・クインテット60」」でも書きましたが、60年代のデンマークはデクスター・ゴードン、ベン・ウェブスター、ケニー・ドリューなど次々と大物ジャズメンが移住してきていて活況を呈していたようです。今日取り上げるサヒブ・シハブはそこまでビッグネームという訳ではありませんが、バリトン、アルト、フルート等を操るマルチリード奏者として50年代のハードバップシーンではそこそこ重宝された存在です。熱心なジャズファンならジョン・コルトレーンの「コルトレーン」、マル・ウォルドロンの「マル2」、アート・ブレイキーのベツレヘム盤などでの彼の演奏を記憶してらっしゃるのではないでしょうか?
本作は1965年、オクターヴという現地のレーベルに残された作品で、サヒブがデンマークで既に有名なグループだったレディオ・ジャズ・グループに参加して録音した作品です。メンバーは総勢17人にも及ぶので列挙はしませんが、比較的名の知られた所ではテナーのベント・イェディク、トランペットのパレ・ミケルボー、ベースのニールス・ヘニング・ペデルセン、ドラムのアレックス・リールあたりが参加しています。5本のサックスに加え、トランペット、トロンボーン、チューバにギター、ヴァイブも加えた重厚なアンサンブルによる力強い演奏が繰り広げられます。
全9曲。おそらく全てリーダーのサヒブの作曲でしょうか?前半4曲は曲風もマイナー調かつ演奏もハードで勝手に北欧風の穏やかな演奏を予想していると面喰います。私が好きなのは後半5曲(レコードで言う所のB面)ですね。どことなくラテン・フレイバー漂う“Mai Ding”は分厚いブラスセクションをバックにサヒブがブリブリ吹きまくる情熱的なチューン。続く“Harvey's Tune”はモーダルなコード進行を持つ軽快なナンバーでここではサヒブはフルートを吹いています。一転して美しいバラードの“No Time For Criers”ではサヒブがロマンチックなバリトン・ソロを聴かせてくれます。疾走感あふれる“The Cross-Eyed Cat”ではサヒブのフルートの後、ベント・イェディクの力強いテナーが聴きモノ。最後の“Little French Girl”ではサヒブが歌声まで披露しますが、これはまあご愛敬というレベル。以上、サヒブのマルチタレントぶりと北欧ジャズメン達のホットな演奏が堪能できる隠れた傑作ではないでしょうか?