ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

アーニー・ヘンリー/セヴン・スタンダーズ・アンド・ア・ブルース

2024-06-06 18:45:47 | ジャズ(ハードバップ)

本日は薄命のアルト奏者アーニー・ヘンリーについてご紹介したいと思います。31歳で早死にしたため録音数こそ限られていますが、セロニアス・モンクの有名盤「ブリリアント・コーナーズ」やファッツ・ナヴァロの「ザ・ファビュラス・ファッツ・ナヴァロ」、ディジー・ガレスピー「アット・ニューポート」など歴史的に重要な作品に参加しているので、ジャズファンなら名前ぐらいは聞いたことがあるのではないでしょうか?ただ、それらの作品でのヘンリーはあくまで脇役。アルト奏者ヘンリーの実力を知るにはリーダー作を聴くのが一番ですが、残された作品はリヴァーサイドの3枚のみ、しかも全て入手困難のレア盤とあって、唯一私が手元に持っているのが本作「セヴン・スタンダーズ・アンド・ア・ブルース」です。録音年月日は1957年9月30日。ウィントン・ケリー(ピアノ)、ウィルバー・ウェア(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)をリズムセクションに従えたワンホーン作品です。

全8曲。タイトルが示すようにスタンダードが7曲、オリジナルのブルースが1曲と言う構成です。しかもスタンダードの内訳は”I Get A Kick Out Of You"”My Ideal""I've Got The World On A String""Sweet Lorraine""Soon""Lover Man""Like Someone In Love"と馴染みのある曲ばかり。それらをアルトのみのワンホーンで演奏するのですから、下手をすればとんでもなく陳腐な作品になってしまうおそれもあります。ただ、聴いてみると非常に耳心地の良い作品に仕上がっています。どの曲も水準以上ですが、中でもおススメはウィントン・ケリーのトロピカルなピアノで始まる”I Get A Kick Out Of You"とスインギーなミディアム調に料理された"I've Got The World On A String"”Soon"あたりでしょうか?1曲だけ収録されているヘンリー作のブルース”Specific Gravity"も出色の出来。典型的なスローブルースで後半に向けて静かに燃え上がっていく様が最高です。

ヘンリーのアルトは特に強いクセもなくストレートに胸に響いて来るような感じですね。ウィントン・ケリーもソロにバッキングにいつもながら安定のパフォーマンス。彼とウィルバー・ウェア、フィリー・ジョー・ジョーンズによる最高のリズムセクションが本作の質を高めていることは間違いないでしょう。アルトのワンホーンによるスタンダード集と言えばジャッキー・マクリーンの「スイング・スワング・スインギン」が有名ですが、個人的にはこちらの方に軍配を上げたいと思います。結局、ヘンリーはこのセッションの3ヶ月後に31歳の短い生涯を終えます。原因はヘロインの過剰摂取。一体この時期どれだけの才能あるジャズマンがドラッグで身を滅ぼしたことか・・・残された素晴らしい演奏を聴くにつれ、もったいないと思わずにいられません。

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ズート・シムズ・オン・デュクレテ・トムソン

2024-06-05 18:32:07 | ジャズ(ヨーロッパ)

アメリカのジャズマン達が大挙してヨーロッパに移住するようになるのは1960年代以降のことですが、もちろんそれ以前にも演奏活動でヨーロッパを訪れることは多くありました。特にフランスは現地のジャズマンにも名手が多く、渡仏したアメリカのジャズマンとのセッションが多く記録されています。本日ご紹介する「ズート・シムズ・オン・デュクレテ・トムソン」もその一つ(ちなみにデュクレテ・トムソンとはレコード会社名です)。録音年月日は1956年3月16日、ズート・シムズと共演するのはアンリ・ルノー(ピアノ)、ブノワ・ケルサン(ベース)、シャルル・ソードレー(ドラム)の現地リズムセクションで、そこにアメリカ人のジョン・アードレイ(トランぺット)が加わるという布陣です。ルノーは当時のフランスを代表するピアニストで、クリフォード・ブラウンのパリ・セッションVol.1Vol.2、Vol.3にも参加していますし、デュクレテ・トムソンには自身のリーダー作も残しています。ジョン・アードレイはニューヨークで活躍した白人トランぺッターで、地味な存在ではありますが一応プレスティッジにも1枚リーダー作を残しています。

アルバムはアンリ・ルノーのオリジナル”Captain Jetter"で始まります。やや哀調を帯びた歌謡曲風のメロディが印象的です。この曲もそうですが、全体を通してバップ色は薄めで、スイング~中間派風の演奏ですね。ズートは元々スイング寄りですが、ジョン・アードレイのトランペットも乾いた感じの音色で、バリバリ吹くという感じではありません。2曲目”Nuzzolese Blues"はズート、アードレイ、ルノーの共作となっていますが、おそらく即興のブルースでしょう。全員白人ですが、きちんとブルースになっています。3曲目”Everything I Love"、5曲目”On The Alamo”、6曲目”My Old Flame"はいずれも歌モノスタンダード。ズートの真骨頂である歌心溢れるテナープレイが存分に堪能できます。アードレイ、ルノーのソロもまずまず。4曲目”Evening In Paris"はクインシー・ジョーンズ作のバラードで、この曲はズートのワンホーンです。ラストの”Little Jon Special"はアードレイ作でスインギーな演奏で締めくくります。なお、ズートとルノーは1961年にもユナイテッド・アーティスツ盤「ズート・シムズ・イン・パリ」で共演しており、そちらも良い作品ですのでまたの機会に取り上げたいと思います。

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ケニー・ドーハム&ジャッキー・マクリーン/インタ・サムシン

2024-06-04 18:34:19 | ジャズ(ハードバップ)

パシフィック・ジャズと言えば、チェット・ベイカー、ジェリー・マリガン、バド・シャンクらを擁し、ウェストコーストジャズを支えたレーベルですが、一方でテディ・エドワーズ、レス・マッキャン、ジャズ・クルセイダーズなど黒人ジャズマンの作品も多く発表しています。ただ、彼らの共通項は全員LAを拠点にしていることで、基本的に東海岸のハードバッパー達とは無縁です。そんな中珍しいのが本日ご紹介するライヴ盤「インタ・サムシン」。東海岸ジャズシーンの重鎮であるケニー・ドーハムとジャッキー・マクリーンがサンフランシスコの名門クラブ、ジャズ・ワークショップに出演した際のライブ録音です。録音年月日は1961年11月13日。リーダー2人以外のメンバーもウォルター・ビショップ・ジュニア(ピアノ)とアート・テイラー(ドラム)は東海岸の面々で、リロイ・ヴィネガー(ベース)のみがウェストコースターです。

内容ですが、基本はハードバップをフォーマットとしつつ、やや60年代っぽい空気も感じられます。ドーハムはこの後ジョー・ヘンダーソンら新主流派の面々を起用した「ウナ・マス」でイメージチェンジを図りますし、マクリーンはこの4ヶ月後にフリージャズを大胆に取り入れた「レット・フリーダム・リング」を吹き込みます。本ライブ自体はそこまで先鋭的な演奏はありませんが、そういった時代の境目にあったと思いながら聴くとより楽しめると思います。実際、1曲目ドーハム作"Us"は上記「ウナ・マス」のタイトルトラック”Una Mas"と異名同曲ですし、マクリーンがワンホーンで奏でる”Let's Face The Music And Dance”も2年前のブルーノート盤「スイング・スワング・スインギン」でも取り上げたスタンダードの再演ですが、心持ち音が尖っているような感じがします。一方でドーハムのワンホーンによるスタンダード”It Could Happen To You”やフランク・レッサー作曲のミュージカルナンバー”No Two People"はクセのないほのぼのミディアムチューンです。個人的好みで言えば後者の方が好きですね。マクリーンが得意の泣きのアルトを聴かせる"Lover Man"を挟んでラストはドーハムのオリジナル”San Francisco Beat”。おそらくこのライブのために作曲されたバップナンバーで、メンバー全員のホットな演奏で締めくくります。

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サド・ジョーンズ/デトロイト・ニューヨーク・ジャンクション

2024-06-03 21:06:31 | ジャズ(ハードバップ)

本日はサド・ジョーンズをご紹介したいと思います。兄はピアニストのハンク、弟はドラマーのエルヴィンのジョーンズ3兄弟の真ん中で、1950年代半ばから約10年間カウント・ベイシー楽団の花形プレイヤーとして活躍し、その後はドラマーのメル・ルイスと組んでサド・ジョーンズ&メル・ルイス楽団(サド・メル楽団)を結成しました。生涯をビッグバンドに捧げたような形ですが、並行してスモールコンボでもちょいちょい演奏しています。一番有名なのはブルーノート盤「ザ・マグニフィセント・サド・ジョーンズ」ですが、今日取り上げるのはその少し前の1956年3月に同じくブルーノートに吹き込まれた「デトロイト・ニューヨーク・ジャンクション」です。

参加メンバーはリーダーのサドに加えビリー・ミッチェル(テナー)、ケニー・バレル(ギター)、トミー・フラナガン(ピアノ)、オスカー・ペティフォード(ベース)、シャドウ・ウィルソン(ドラム)です。タイトルにあるように、サド、ミッチェル、バレル、フラナガンの4人がデトロイトの出身で、当時よくあったデトロイト・セッションの1つとも言えますが、ペティフォードとウィルソンはデトロイトとは関係なく、40年代からニューヨークで活躍するベテランです。

全5曲。スタンダード2曲、サドのオリジナル3曲という構成です。1曲目ロジャース & ハートの"Blue Room"はゆったりしたスイング風の演奏で、ドラム以外全員が心地良くソロをリレーします。2曲目”Tariff"は軽快なハードバップで、ミッチェル→バレル→フラナガン→サドと切れ味鋭いソロを聴かせます。3曲目”Little Girl Blue"は3分弱しかない箸休め的なバラードで、トランペット、ギター、ベースのトリオ演奏です。4曲目”Scratch"は本作のハイライトとも言える曲。ミディアムテンポでまず最初にサドがブリリアントなトランペットを聴かせ、哀調を帯びたバレルのギター、エレガントなタッチのフラナガンのピアノ、朗々と歌い上げるミッチェルのテナー、重厚なペティフォードのベースと続きます。なかなかの名曲・名演ですね。ラストの”Zec"は再びアップテンポのバップで、とりわけバレルとフラナガンのソロが光ります。以上、ざっくり言うとスタンダードがスイング風、オリジナルがハードバップ風と新旧織り交ぜたスタイルで、この時期のブルーノートでは異色の作品ですが、内容的にはなかなか楽しめる作品です。リーダーのサドだけでなくビリー・ミッチェルもベイシー楽団やディジー・ガレスピー楽団等ビッグバンドのイメージが強いですが、両者ともスモールコンボで素晴らしいソロを聴かせてくれます。バレル、フラナガンもいつもの安定ぶりですね。

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アート・ペッパー/ゲッティン・トゥゲザー

2024-06-01 21:01:03 | ジャズ(ウェストコースト)

チェット・ベイカーとともにウェストコーストジャズの雄として君臨していたアート・ペッパーですが、東海岸の黒人バッパーと共演した作品が2つあります。1つは1957年の「アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション」。当時のマイルス・デイヴィス・クインテットのリズムセクションであるレッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズと共演した作品です。ジャズ名盤特集にも必ず取り上げられるほどの有名盤で、私も20代半ばのジャズ初心者の頃には既に持っていました。一方、今日ご紹介する「ゲッティン・トゥゲザー」はそれに比べると地味な扱いを受けています。ただ、こちらも録音当時(1960年2月)のマイルス・デイヴィス・クインテットのリズムセクションが加わっており、メンバー的には十分豪華です。ただし、3年経ってメンバーも代わっており、ベースのチェンバースは同じですがピアノはウィントン・ケリー、ドラムはジミー・コブです。さらに、7曲中3曲でトランペットのコンテ・カンドリが参加しています。

この作品で変わっているのが2曲目”Bijou The Poodle”と7曲目”Gettin’ Together””でペッパーがアルトではなくテナーサックスを吹いていること。どちらもペッパーの自作曲で前者は当時流行し始めたフリージャズを意識したのか変テコなメロディの曲ですが、後者はブルースでペッパーの渋いテナーソロを聴くことができます。とは言え、やはりペッパーはアルトの方がいいですね。1曲目”Whims Of Chambers”はポール・チェンバースのオリジナル曲(「ウィムズ・オヴ・チェンバース」収録)で、チェンバースのズンズンと刻むリズムをバックにペッパー→ケリー→コンテと快調にソロを取ります。4曲目”Softly As In A Morning Sunrise”(朝日のようにさわやかに)も定番スタンダードで選曲自体はベタですが、ペッパーの奔放なアドリブで新たな命を吹き込んでいます。セロニアス・モンクの”Rhythm-a-Ning”も意外な選曲ですが、ペッパーはじめ全員楽しそうに演奏しています。バラード2曲も素晴らしいです。1曲は当時ジャズピアニストとして活躍していたアンドレ・プレヴィンの曲”Why Are We Afraid”。プレヴィンが音楽監督をした「地下街の住人」という映画の曲らしいですが、なかなかの名曲です。もう1曲はペッパー自作の”Diane”。妻ダイアンに捧げた名バラードで、ペッパーも何度も演奏している愛奏曲です。優しく美しい旋律でペッパーのソロもため息の出る美しさです。ケリーのピアノソロも絶品ですね。以上、聴けば聴くほど味が出る作品で、個人的には「ミーツ・ザ・リズム・セクション」よりも内容は上ではないかと思いますがどうでしょうか?

 

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