広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

星と動物のバス

2008-11-28 19:26:09 | 秋田のいろいろ
秋田市内でこのバスを見たことがある方がいるかもしれない。

1世代前のいすゞの中型観光バス「ガーラ・ミオ」。2台一緒にいることが多く、客席に人が乗っているとすれば、小中学生。
遠目に見ると、2台とも側面にはバス会社名などの表示を読み取れず、どこのどんなバスか見当が付かないかもしれないが、インパクトのあるデザインだ。前のバスは動物のシルエット、後ろのバスは土星や木星の絵が描いてある。図鑑の絵のようにきれいで、見ていて楽しく、興味をそそられるデザインだと思う。

正面。(※駐車中のバスは公道上から撮影しました。駐車場内への立ち入りはできません)

ナンバープレートは白いので、緑ナンバーの営業車でなく、自家用ということになる。前面は特に意匠はなく、真っ白。ナンバーの上、ヘッドライトの間の「あんどん(行灯)」と呼ばれる部分に「ALVE」と書いてある。秋田市民ならこれでどこのバスかお分かりかもしれない。

「ALVE(アルヴェ)」とは2004年に秋田駅東口(いわゆる駅裏)にできた、「秋田拠点センター」の愛称。中には飲食店・映画館・ホテル・市役所出張所などが入る官民複合施設。
これはその中にある秋田市教育委員会管轄の「秋田市自然科学学習館」のバスで、秋田市所有・市教委使用という位置づけの車両。秋田市内の小学校3年生と中学校2年生は年度内に1度、来館して学習することになっているようで、各学校とアルヴェ間の送迎がこのバスの主なお役目。デザインは以前このブログで風景を紹介した旧米倉庫を施設として活用している、美術工芸短大の先生が中心となって行ったようだ。
バスについては同館のサイトに説明(http://www.city.akita.akita.jp/city/ed/ns/bus.htm)とPDFファイルの画像やペーパークラフトもあるのでご参考に。

それぞれのバスのデザインを見てみる。

47人乗りの「惑星の大きさ,距離の比較をテーマに,太陽系の惑星など」を描いたバス。2006年に冥王星が惑星でなくなったので、「惑星など」となっているようだ。
側面は運転席側も反対側も同じデザインのようで、太陽を下に配置し、冥王星と8つの惑星を大きさ順に並べている。星の名前は英語表記。
上の画像の拡大
いちばん小さい「Pluto」が冥王星(ちなみにディズニーのプルートは冥王星が発見された年の生まれ)。「Earth」は文字が大きく、イラストには陸地と雲も描かれる。


後部は太陽と惑星との距離を示しているようだ。しかし「水・金・地・火」までしか見えない。残りはどうしたかというと、なんと屋根上に描かれている(興味のある方は上記公式サイトのペーパークラフトをご覧ください)。冥王星は前輪やドアの上付近にあって、いかに遠くにあるかが分かる。


もう1台は「時代の比較,動物の大きさをテーマに古代,現代の動物」。星のバスと同じ大きさなのに定員が42人と少ないのは、車椅子対応だから。そのため、路線バスのように真ん中にもドアがある(ペーパークラフトでは中ドアは省略されている)。
大きさを比較しやすいようになのか青地に白い方眼がベース。こちらは左右でデザインが異なる。運転席側が絶滅した動物、ドア側が現存する動物をそれぞれシルエットで大きさ順に並べている。動物はほぼ実物大だろうか、窓にまでイラストがある。種名の表記は「Laion」などとローマ字。

見にくいですが絶滅側。

前側から始祖鳥・サーベルタイガー・猿人・モア(昔、カップヌードルのCMに出ていたダチョウのでかいヤツ)・マンモス。

現存側。

ハチドリ・トガリネズミ・ライオン・ヒト・ダチョウ・アホウドリ・ゾウ。
ヒトがちょうど中ドアにぴったりはまっているのがなんとなく面白い。頭の後ろの黄色いのは車椅子のリフト。アホウドリの翼とゾウの顔周辺が交錯して複雑。
反対側とは小型鳥類・大型ネコ科・人類・ダチョウ類・ゾウとある程度対応している。


後ろはキリンの胴体だけ。首から上は屋根に描かれている。
側面の窓ガラス部分の絵は透けないシールのようだ。この席に座った子は外が見えなくてちょっとかわいそう。

さらに屋根には、現存最大の動物であるシロナガスクジラの尾びれだけが、ほぼ屋根いっぱいに描かれている。


どちらの車も、デザイン性だけに偏らず、科学的根拠もあって、自然科学学習館のバスにふさわしい。「バスとの出会いから学びが始まる-テーマ「比較」-」というデザインコンセプトが、デザインの素人でも理解できる。

個人的には、動物の方が好き。白とブルーの色使いや方眼がシンプルでいい。
生き物好きとしては恥ずかしながら、始祖鳥やサーベルタイガーが思ったより小さいこと、ハチドリやトガリネズミの小ささとアホウドリの大きさはこのバスを見なければ知る機会はなかったかもしれない。


旅先の各地でいろんなバスのデザインを見て、最近はラッピング広告バスも増えているが、「好きなバスのデザイン第1位」にしたいほどのデザインだ(2位以下は?と聞かれると困るけど)。


ケチをつけるつもりはないが、こんなにすばらしいデザインだからこそ、もう一工夫ほしい、あるいは意図がデザインの素人で部外者である僕に伝わらないことがある。
・屋根上にもデザインが施されていて、それを見る機会が少ないのが残念というかもったいない。クジラの大きさ、冥王星の遠さは屋根を見なければ分からない。(これは完全にデザイン上の問題なのでそれを“狙った”のかもしれない)
・動物バスのローマ字で「Hachidori」のように「チ」を「chi」つまりヘボン式で表記しているのに、「Sisochou」「Sironagasu~」と「シ」は「shi」でなく訓令式の「si」表記で統一されていない。そういう表記方式があるのだろうか?
・施設名は運転席窓とドアの横に「自然科学学習館」とハチドリ並みの小さい字で書かれていて(上の写真参照)、しかも「秋田市」の文字がどこにもない。例えば、たまたま後続になった市外のドライバーや、秋田駅周辺で目にした旅行客は、このバスを見て「センスのいいバスだ」と思ってくれても、秋田市の施設のバスだとは分からない。側面にある程度の大きさで、そして後部にも「秋田市自然科学学習館」と入れれば一目瞭然で、同館や秋田市のPR、イメージアップになるのに。
・正面の行灯も「ALVE」より、「秋田市自然科学学習館」の方がいいと思う。これはアルヴェのバスではなく、秋田市所有・使用の車両で、たまたまアルヴェに入居している施設用の車両なのだから。フロントガラス下の白いスペースに「ALVE」のマークを入れてもいいかも。

上記を織り込み済みでこのデザインがされたのなら、たいへん申し訳ないし、「どの角度からでも同じデザイン」「所有者名を明記」というのは、既存のバスの固定観念であって、不特定多数が乗る営業用バスとも異なるので、必ずしも必要ではないのかもしれない。
だけど、自家用送迎バスとはいえ、自治体・公共施設の車両であり、こんなにセンスのいいバスを正体不明のバスで終わらせるのはもったいない。安くはない新車のバスを2台も買ったのだから、それを最大限活かして、市や施設の宣伝というか周知を考えてもいいんじゃないかと思ったりもする。


それはともかく、このバスが回送しているところを目にしたが、運転士は制服はないようだが、きちんと白い手袋をはめ、丁寧に無人のバスを動かしていたのが印象に残った。おそらく今はなき秋田市交通局で路線や貸切バスの運転士をしていた職員が教委に異動して運転業務をしているのだろう。かつての秋田市営バスを思い出した。
コメント
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