◯ダンスパーティー
昭和30年代中頃、M男が、北陸の山村の親元を離れ、地方都市の学生寮に入寮し、生まれて初めて外で集団生活を始めた頃の話である。
学生寮に入寮してまもなくのこと、新入寮生は、度々、寮の食堂に呼び出された。「寮歌を教え込まれた話」は、「学生寮の記憶・その2」に記したが、同時並行して、「社交ダンスの教習」が有った。社交ダンスとは言っても、ほとんど、ジルバ、ブルース、マンボ、ルンバ等のベーシックレベルのものであったが、北陸の山村育ち、フォークダンスの経験すら皆無で、ダンス等とは無縁だったM男等にしたら「エッ!、ダンス?」、青天の霹靂の感を覚えたものだった。
先輩寮生の何人かが、手取り足取り、一から教えるものだったが、それまで見たことも聞いたことも無かった「社交ダンス」、イメージもわかず、マゴマゴするばかりだったと思う。記憶曖昧だが、女子学生寮からも指導役?で、何人かが応援参加していたのかも知れないが、高校卒業まで、女性に触れる等、とんでも無かった時代、手を握る、腰に手を当てる等、大パニックだった気がする。「寮生が、何故?、社交ダンス?」。それは、当時、学生寮自治会主催で、「新入寮生歓迎ダンスパーティー」「寮祭ダンスパーティー」「クリスマス、ダンスパーティー」等の年中行事が有って、一応 「寮生は、社交ダンスは覚えなければならない・・」等という不文律のようなものが有ったのだと思う。否応なく半強制的に参加させられたような気がする。
まったくの初心者が数回の教習、それも先輩の足型を真似する程度の教習で、直ぐ、本番ダンスパーティーで、女性と組んで踊れるはずは無しで、初めてのダンスパーティー「新入寮生歓迎ダンスパーティー」では、オドオドするばかりで、先輩寮生が楽しげに踊るのを見学するのみだったような気がする。
学生寮自治会主催の「ダンスパーティー」の会場が、寮の食堂だったのか、学生ホールのような場所だったのかの記憶は無くなっているが、主に先輩寮生達が、女子学生寮の寮生や看護学校の生徒やデパートの女性店員等、あちらこちらにパー券を売って招集した女性達であふれ、電飾とバンド演奏、その雰囲気に飲まれたものだ。その後、何度かのダンスパーティーを経験して、次第にその雰囲気にも慣れ、ジルバ、ブルースのベーシック位はなんとか踊れるようになったものの、その他、ワルツ、タンゴ等の曲がかかるとやはりお手上げ、眺めるだけの無骨者だった。
昭和30年代前後には、全国的に、学生等若者が中心の「社交ダンスパーティー」なる催しが行われていたような気がするが、M男が学生寮に入寮していた頃が、ちょうどそんな風潮の最盛期だったのかも知れない。そして時代が変わり、1980年代前後になると、第二次社交ダンスブーム「中高年の社交ダンス」が盛んになり、現在に至っているようだ。
(ネットから拝借イラスト)
(つづく)