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平岩弓枝著 「火宅の女ー春日局」

2023年06月14日 14時36分08秒 | 読書記

図書館から借りていた、平岩弓枝著「火宅の女ー春日局」(角川書店)を読み終えた。本書は、多くの作家の手によっても描かれており、再三、映画やテレビドラマにもなり、よく知られている、徳川家光の乳母として名を馳せた「おふく(春日局)」を主人公にした長編時代小説である。

▢目次
(一)~(十八)
▢主な登場人物
おふく(春日局)、稲葉重通、稲葉正成、鶴千代、
稲葉正勝、稲葉正定、稲葉正利、
秀尾、
徳川家康、徳川秀忠、お江与の方
徳川家光(竹千代)、孝子、
徳川忠長(国松)、
阿茶局
本多忠刻、千姫(天寿院)、
おふり、満子(お万の方)、おらん(お楽の方)、矢島局、

▢あらすじ
後に、三代将軍徳川家光となる二代将軍秀忠の嫡男竹千代の乳母となり、江戸城奥で絶大な力を持ったおふく(春日局)ではあるが、その出自と経歴は、多難、複雑、幸運に満ちているものだった。父親、明智光秀の重臣斎藤利三が、織田信長を討った後捕らえられ処刑されたのは、おふくが四歳の時で、その後、謀反人の娘という身分を隠し、母方の稲葉家(稲葉重通)の養女として成長したが、本書は、行儀見習い、雑仕女としての公家三条西家に奉公しているところから始まっている。
おふくは、小早川秀明の重臣・稲葉正成の後妻となり筑前へ。先妻の娘2人と、乳母秀尾との確執。夫正成は、関ケ原の戦い後、恩賞として備前美作領主となったが、裏切り者の烙印を押された小早川秀明の恨みを受けて、浪人となってしまい、おふく、先妻の子供2人、実子2人と共に美濃に戻る。そして、秀尾が・・・。稲葉家存亡の危機に何が出来るのか?。稲葉家再興のため、起死回生に打って出るおふく。その選択は、徳川支配が確固たる情勢に中で、夫、子供達とも別れ、江戸城で次期将軍となる若君の乳母になることだった。おふくと、後に三代将軍・家光となる竹千代との運命的な出会いになるが、浪人の妻女のおふくの願いが叶った陰には、家康と、家康の愛妾で、政治向きにも深く関与、策謀、家康の耳目と言われた才色兼備の阿茶局の働き、存在が大きかったのだった。おふくは、阿茶局が敷いたレールをひた走り、導かれている内に、次第に、登り詰めて行ったとも言える。当初は、稲葉家再興のため・・、だったはずの乳母だったが、次第に、家光を守るため、あらゆるものに敵対心を募らせ、とりわけ忠長の存在排除に執念を燃やすことになっていくおふくだった。
80歳を超えた阿茶局には、全てを見抜かれていて、「・・・よくぞなされた。お見事でございます」と言われ、顔から血が引く場面が有り、おふくは、改めて、阿茶局の凄さに気がつくのだった。
別格に美貌でもなく、特に優れた才覚を持っていた分けでもなく、どちらかいうと自己中、寛容な人格でもなかったおふくが、悩み苦しみながらも、人生を切り開くために強い意志を持って、むしろ執念を貫いて、一途に生きたこと、そのことを賛美している物語になっているような気がする。
「火宅」とは、「汚濁と苦悩に悩まされて、安住出来ないこと」の意。まさに、おふくの生涯は、それだったのだろう。阿茶局も死去し、奥御殿は、家光の愛妾達で華やかで賑やかになり、おふくの居場所はなくなり、寛永二十年九月十四日、竹橋の屋敷で息を引き取った。

春日局(おふく)の辞世として伝えられている句。

   西に入る月をいざない法(のり)を得て
   今日ぞ火宅(かたく)を逃れけるかな  

春日局
(ネットから拝借画像)

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