図書館から借りていた 池波正太郎著 「忍者群像」(文春文庫)を 読み終えた。本書には 「鬼火」、「首」、「寝返り寅松」、「闇の中の声」、「やぶれ弥五兵衛」、「戦陣眼鏡」、「槍の忠弥」の7篇が 収録されている。
(主な登場人物とあらすじ)
「鬼火」
松尾九十郎(銭屋四兵衛)、おふく、坂巻伝蔵、伴太郎左衛門資宗、織田信長、明智光秀、
織田信長に信頼されていた伴太郎左衛門資宗は配下の忍び松尾九十郎を明智光秀に潜入させていたが、謀反を見抜けなかった。光秀は密書を忍びの坂巻伝蔵に託すが、それを追う九十郎、忍び同士の死闘のすえ・・。30年の歳月が流れ、豊臣、徳川の時代になり・・、「おい、松尾九十郎」・・・。
「首」
岩根小五郎、助七、山中大和守俊房、桜野宮内、
明智光秀を討ったのは自分と思っている甲賀の忍び岩根小五郎は 光秀が生きていると聞き愕然とする。「光秀の行方をたしかめねばならぬ」。裏には甲賀忍びの統領山中大和守俊房の思惑が有り・・、数個の車手裏剣が・・・、「甲賀を離れたものの最期は これじゃ・・」
「寝返り寅松」
小出寅松、飯道弥平太、山岸主膳之助、北条氏邦、山中長俊、お万喜、
豊臣方の山中長俊の配下で鉢形城に潜入していた忍び小出寅松が 仕えていた山岸主膳之助に正体を看破されたことと、豊臣秀吉の小田原城攻めとの関わり、忍び仲間同士の死闘が描かれている。
「闇の中の声」
西尾仁左衛門、弥五兵衛、真田幸村、
甲州郡内地方が領地だった鳥居元忠の配下で 徳川家康の上田城攻めに参加した時 西尾仁左衛門は17歳だった。幸村に迫ったが・・・。「殺すなよ、弥五兵衛」、真田幸村の声を 朦朧とした意識で聞いた。功を焦る西尾仁左衛門、大阪夏の陣では 幸村の死首を・・・、「十年ぶりでござるなあ」、弥五兵衛の眼は笑っていなかった。あの男との4度目の出会いは 声だけだった。そして 仁左衛門は・・。
「やぶれ弥五兵衛」
奥村弥五兵衛、小たま、梅春、加藤清正、真田幸村、徳川家康、
徳川家康は秀忠に将軍職を譲り、大阪城の豊臣秀頼、淀君の扱いに思案中、加藤主計清正が動く。配下の忍び奥村弥五兵衛を真田幸村との連絡に使うが 九度山には 徳川方の見張り忍びの存在有り・・、「さらば、甲賀の敗れ忍びの取る道は一つじゃぞえ」、女忍び小たまの声が途絶えた。
「戦陣眼鏡」
水野監物忠善、笠原助右衛門、
水野監物忠善が 三河国岡崎に国替えとなるが 尾張の徳川義直の動向を監視する役目を 勝手に勘違いし気負い、近習の笠原助右衛門と名古屋城下に潜入、堀の深さ等を調べたりするが 実は 助右衛門は 実は、老中 酒井忠勝配下の公儀隠密、なんとも 困ったちゃん。そんな殿様に惚れてしまった助右衛門は・・・。
「槍の忠弥」
丸橋忠弥、お節、お万津、乗杉七兵衛(岩根十兵衛)、由井正雪、松平伊豆守信綱、
徳川幕府三代将軍家光の時世、丸橋忠弥が乗杉七兵衛という浪人と出会うところから物語が始まる。忠弥は親しい間柄になった由井正雪から 反乱計画を持ちかけられ・・・、結果は・・。「なにもかも うまくはこんだ」・・・松平伊豆守信綱は 七兵衛に言った。七兵衛、実は 幕府隠密岩根十兵衛。