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藤沢周平著 「よろずや平四郎活人剣(上巻)・盗む子供」

2020年10月28日 08時01分33秒 | 読書記

図書館から借りていた 藤沢周平著 「よろずや平四郎活人剣(上巻)・盗む子供」(文藝春秋)を 読み終えた。「オール読物」1980年(昭和55年)10月号から1982年(昭和57年)11月号に連載された連作短篇構成の長編時代小説で 1983年(昭和58年)に発刊された(上巻)(中巻)(下巻)の内の(上巻)である。

藤沢周平著 「よろずや平四郎活人剣(上巻)・盗む子供」

本書には 表題の「盗む子供」の他、「辻斬り」、「浮気妻」、「逃げる浪人」、「亡霊」、「女難」、「子攫い」、「娘ごころ」の 連作短篇8篇が収録されている。

(上巻)の主な登場人物

神名平四郎(主人公)・・幕府目付神名監物の腹違いの末弟(亡父が 台所下働きの下女に産ませた子)、24歳、神名家ではずっと冷遇されていた、冷や飯食い(次男以降の男子)、雲弘流矢部道場では次席に位置する高弟、実家を飛び出し、道場で知り合った明石半太夫、北見十蔵と道場を立ち上げようとするが 明石半太夫の裏切りで計画が頓挫、長屋に住み付き、生計のため、思い付きで 「よろずもめごと仲裁つかまつり候」の看板を掲げるところから 物語が始まる。一方で 兄の目付神名監物からは 危険を伴う探索や護衛等を命じられ、そのほとんどがただ働きで、不満を抱きながら逆らえず従う。

神名監物・・平四郎の腹違いの兄、幕府目付、同じ目付で後に南町奉行になる鳥居耀蔵とは対立する一派に属している。しばしば、平四郎に危険が伴う探索や護衛等を命じる。

里尾・・神名監物の妻(平四郎の義姉)、42歳、早く実母を亡くした平四郎にとって、幼い頃は母親代わり、厄介者扱いされがちな平四郎に対して 昔も今も温かく接してくれる唯一の理解者。

明石半太夫・・平四郎が共に道場を開設しようとした矢部道場の仲間の一人、肥後出身、39歳、平四郎と北見十蔵が出資した金を持って夜逃げ、後に南本所に住んでいることを突き止められたが、平四郎、北見十蔵に対して、のらりくらり、金を返そうとしない。一方で 時には平四郎と共に 剣をとって戦う仲間、

北見十蔵・・平四郎が共に道場を開設しようとした矢部道場仲間の一人、元仙台藩藩士、30歳、寺小屋の師匠、達筆、平四郎には人が良すぎるように見えるが 時には 平四郎と共に 剣をとって戦う仲間。

鳥居耀蔵・・実在の人物、老中首座水野忠邦の懐刀、天保の改革の実行に力を尽くした人物、目付神名監物(平四郎の腹違いの兄)と同じ目付だったが 対立した一派。南町奉行矢部定鎌を讒言により失脚させ その後任に座る。

島田耕作・・高野長英の弟子、「変社遭厄小記」を預かった人物、目付鳥居耀蔵と彼に対抗する目付神名監物が 田島の身柄確保を目指し暗闘、平四郎も度々駆り出される。

矢部三左衛門・・雲弘流剣術道場矢部道場の主、

伊部金之助・・平四郎の矢部道場の仲間、平四郎が元許嫁の早苗に関する情報探索を依頼、酒好き、ひどい泣き上戸、コミカルなキャラクター。


第12代将軍徳川家慶の下、天保12年(1841年)頃から天保14年頃、老中水野忠邦が天保の改革を行い、失脚するまでの期間、水野派と反水野派の政争が有った時代を背景にしている。水野忠邦に重用された、蘭学嫌いの目付(後に南町奉行となった)鳥居耀蔵が 渡辺華山、高野長英等の蘭学を弾圧した蛮社の獄に関わる物語も登場している。剣の達人でありながら 長屋に住み よろずもめごと仲裁の手数料で生計を立てる主人公神名平四郎のユニークなキャラクター、ユーモアをも秘め、双方に傷が残らないように収めるよろずもめごと仲裁、ラブストーリー有り、凄まじい斬り合い場面も有り、庶民の暮らしと武家の諸問題、並列で描いた痛快娯楽時代劇だと思う。

(つづく)

 

 

 

 


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