図書館から借りていた、藤沢周平著、「夜の橋」(中央公論社)を、読み終えた。本書には、江戸時代の人々の哀歓を描いた、武家もの、市井もの等、バラエティーに富んだ短編7篇が収録されている。
「鬼気」
藤沢作品に多い 東北の小藩が舞台だと思う。城勤めの徳丸弥一郎、鳶田勇蔵、部屋住みの平野作之丞は 噂で評判の細谷久太夫の力量に半信半疑、しかし興味深深、仕掛けるが 思い知る結果に。
「夜の橋」
江戸の町、民次は 博奕にのめりこんだことが原因で 女房 おきくと別れ 一人暮らしだったが その おきくが 再婚の相談で訪ねてきた。おきくの再婚相手 駿河屋の番頭 兼吉の正体は とんでもない?、民次は 体を張って阻止。賭場を抜け出した民次は 半殺しにされたが そこに おきくが現れ 元の鞘に収まる?ところで 終わる。
「提灯のひかりに浮かび上がった二人の影は 二ノ橋を渡ると 人気のない相生町の町並みをゆっくり遠ざかって行った」
「裏切り」
やはり 舞台は 江戸の町。研師である 幸吉の女房 おつやが 何者かに殺された。突き詰めていくと 犯人は 幸吉の幼馴染の長次郎だった。幸吉が 長次郎を殺そうとしたところに 岡っぴきの千蔵が現れる
「一夢の敗北」
舞台は 米沢藩。一刀流の達人 吉田次左衛門一夢は 藩が招聘した 細井平洲に 一計を企てたが・・・。
「冬の足音」
江戸の町、お市は 以前 家で働いていて 突然辞めた 職人 時次郎のことが忘れられず 叔母の およしが持ってくる縁談を断り続けていた。時次郎を探す内 様々な状況を知ることになる。
「梅薫る」
藤沢作品の多くのように 東北の小藩が舞台と考えられる。奥津兵左衛門の娘 志津は 保科節蔵に嫁いでいながら 度々 実家に戻ってきていた。それには 誤解や拘りがあったのだが 最後には 解けて 保科の元へ 帰って行く。
「これを 保科に 持ってまいれ」・・兵左衛門が 庭の梅の枝を折り 志津に渡すところで終わる。
「孫十の逆襲」
舞台は 岐阜県との県境に近い福井県の山奥の村に設定さてれいるようだ。関が原の戦いで敗れ 逃げて逃げて 生き残り 村に帰ってきた 孫十が 暴れまわる野伏せりの来襲を目前にして 戦争経験者?として頼られてしまい 野伏せりに挑戦、討ち取りを果たすという物語。
「泣くな けい」
やはり 東北の小藩は舞台と思われる。御納戸奉行配下の 相良波十郎は 藩の倉に有るはずの宝剣が行方不明となり 腹切りも覚悟したが 波十郎の奉公人の けい(女性)が 宝剣の行方を追って 江戸まで上がって 買い戻してきてくれ 1件落着する。
「暗い鏡」
江戸の鏡職人 政五郎と 姪 おきみとの関わりを中心に 描かれている。
「あとがき」で 著者は 「時代小説といっても 短編の場合のヒントは 必ずしもむかしあったことから得るわけではなく 案外にいまの世の、ことに身辺に見聞きすることから材を取ることが多いようである」と 述べています。
「夜の橋」「裏切り」なんかが面白いね~
最近になって 少し 読み始めた類ですが 藤沢ファンになりつつあります。
面白いですし 特に 氏独特の自然描写が 気に入っています。
短編は 次ぎ、次ぎ、引き込まれ、あっという間に 読み終えてしまいますね。
特に〈橋もの〉と呼ばれる作品に惹かれます。
「橋」は人と人との出会いの場でもあり、別れでもあり。
以前、『橋ものがたり』のなかの「小ぬか雨」を、朗読したことがあります。
登場する人物の心情と、情景描写が実に美しく心に響いてくる藤沢作品が大好きです。
他のブログ友からも推奨された 藤沢作品、読み始めて 引き込まれています。
おっしゃる通り 登場人物の心情や情景描写、心に響きますね。
「橋もの」情報、有難うございます。
お出かけされたり,スイミングに行かれたり,畑仕事もなさり,読書も次々に・・・
私は読むのが遅く,時間が掛かかります。
家事の合間を縫って,少しづつ,でも本はページをめくれば続きを読むことが出来るので,自分のペースで進められるところが良いと思っています。
藤沢作品の新作はもう読めないと思うと,寂しいです。
長男が好きで集めた文庫本を,時々引っ張り出して読み返しています。白石一郎氏の時代物もその中にあり,気分の向くまま読み返します。
先日のけがで,大っぴらに家事がサボれて,読書の時間が増えましたが,夫に申し訳なくて,むしろ遠慮しています(笑) ご心配頂き嬉しく思っています。ありがとうございます。
奥様は 古風ですね。我が家の山の神は 怪我や病気無しでも あーせい、こーせい 奴隷の如く こき使います。役割分担?と称して。
若い頃と違って 回復に時間が掛かるんでしょうね。お大事になさって下さい。