映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

遠い空の向こうに

2007年12月01日 | 映画(た行)

(DVD)
ホーマー・H・ヒッカムJr.自伝小説「ロケット・ボーイズ」の映画化です。

時は1957年。
ソ連により初の人工衛星スプートニクの打ち上げが成功しました。
アメリカ、ウィスト・ヴァージニア州コールウッドという炭鉱町に住む高校生、ホーマー。
彼は町の人々と共に、その人工衛星が夜空を横切っていくのを見上げました。
ホーマーはその美しさに感動します。
男はみなそこで炭鉱マンになることが決まっているかのようなその町で、
彼は、宇宙に夢を馳せたのです。
同じ高校の友人3名と共に「ロケットボーイズ」を結成。
まずは、ロケットの打ち上げを果たそうとするのですが・・・。
数々の失敗。
周囲の人も、馬鹿にして取り合ってくれない。
真っ先に父が反対。
ホーマーの父ジョンは、炭鉱でも責任ある立場にあり、町の人の信頼も厚く、仕事に誇りを持っています。
それなのに、現実に足のつかない宇宙。ロケット。まったく理解できない!!、
・・・ということで反発しあう父子。

花火ではなくロケットですから、必要なのは正しい理論と技術。
炭鉱に働く人たちから、溶接を習ったり、鉄の技術を学んだり。
また、それまで、数学など大嫌いだったホーマーが必死に勉強を始め、ロケットに関する専門書も読み漁ります。
そんな真剣な様子に、周囲も次第に応援を始める。


その当時の時代色が鮮明に切り取られているように思いました。
石炭産業は、日本でもそうですが、経済を支える大きな役割を果たしていました。
でも、炭鉱で働くことはつらくまた、危険でもありました。
そして、資源も枯渇に向かい、ストライキなど、労働運動の拠点ともなっていく。
炭鉱にもやや、疲弊感が漂いだしている時期。

この炭鉱で一生を終えるのか・・・。
他の生き方は許されないのか。
そんな閉塞感が余計に若者の外の世界への夢をかき立てるのです。

父が炭鉱の事故で負傷。
それだけで、もう家族の生活にも困ってしまう。
劣悪な労働条件・・・。
やむなく、ホーマーは嫌がっていた炭鉱で父の変わりに働き始めますが・・・。
彼をはじめから応援してくれた教師ミス・ライリーの言葉で夢をまた取り戻し、活動を再開。

ジェイク・ギレンホールがさすがに若く瑞々しく、夢を負う青年を際立たせています。父親との微妙な距離感もいい。

夜空を横切る輝く人工衛星のように、私にとっては「珠玉」の一作となりました。

1999/アメリカ/108分
監督:ジョー・ジョンストン
出演:ジェイク・ギレンホール、クリス・クーパー、ローラ・ダーン、クリス・オーウェン