「香菜里屋を知っていますか」 北森 鴻 講談社
ビア・バー「香菜里屋」シリーズ完結編。
このシリーズは、ここまで文庫で読んだのですが、このたび完結編が店頭に出たのを見て、我慢できず、ハードカバーを買ってしまいました。
でも、この巻はちょっと寂しいのです。
今までの常連さんがたっぷり出てくるのはいいのですが、みな、結婚したり、新しい地で新生活を決意したりして、旅立っていく。
それは、おめでたいことなのですが、卒業生を送り出すみたいな、取り残された寂しさがありますね。
そんなころあいを見てか、マスター工藤も人生の転機を見出し、香菜里屋をたたんで去ってしまうのです。
工藤の隠された過去とは、昔、香月と共に勤めていた店での出来事。
想像通り女性がらみ・・・。
これを言ってはおしまいなので、ネタ晴らしはしませんが・・・。
これまでの巻は、どこから見ても楽しめましたが、この巻は、多分これまでのストーリーを読んでいなければ、さほど楽しめないと思います。
ミステリ要素も控えめ。
まさに、工藤のための本だからです。
そのせいか、料理の腕も湿り勝ちなんですが・・・
今回の香菜里屋メニュー
さっとゆでたモヤシに極少量の塩とごま油。
京都で言うところのちりめん山椒をからめて。
(ここで使用するちりめんじゃこは無添加、天日干し。
純米酒と少量の天然醤油のみで2時間ほどかけて煮た、手作り!)
鯛のかぶと、中華風清蒸(チャンジョン)
冬のうまみがたっぷり詰まった大根を輪切りにし、
下茹でして、テールスープで3時間ほどことこと煮込んだもの。
蟹のほぐし身のくず餡をかけて。
素揚げしたクワイに辛子明太子をほぐして添え、酢橘をたっぷりかけたもの。
スモークサーモンといくらのマリネ。キャビアを少々添えて。
刻みピータンと賽の目に切った大根の浅漬けの和え物。ライムをさっとかけて。
ジャガイモと牛肉を甘辛く煮た肉じゃが入りオムレツ。
醤油味を聞かせた出しにとろみをつけて、かけまわして。
馬肉のカルパッチョ。
あめ色になるまでじっくりと炒めた玉ねぎで甘みとコクを出し、
一方はしゃきしゃき感を残した玉ねぎで歯ごたえと香りを出す。
この2種の玉ねぎの入った一口ミートコロッケ。
生ハムに自家製のピクルスを包み、
さらにライスペーパーで包んで、軽く揚げたもの。
おや?料理も湿りがち?
うそでした・・・。
なんだかほんとに自分の行きつけの店がなくなってしまったような,
寂しさを感じます。
願わくば、新天地の工藤氏が幸せでありますように・・・。
そうだなあ、流れ流れて北海道、札幌のススキノのはずれあたりで、
やはり小さなビアバーを開いていたらステキ・・・。
満足度★★★★
香菜里屋の料理が満載・・・・
「映画と本のたんぽぽ館」花の下にて春死なむ