映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「風の歌、星の口笛」 村崎 友 

2007年12月15日 | 本(ミステリ)

「風の歌、星の口笛」 村崎 友 角川文庫

どう見てもSF・・・・?
ハヤカワかと思ったら、やっぱりカドカワ・・・。
この表紙。この文体。
やっぱり、かなりハードなSF。
しかし、第24回横溝正史ミステリ大賞受賞作、とあるではありませんか。
やっぱりミステリなのか。


ここでは三つのストーリーが平行して語られていきます。

まずは、未来都市らしい風景。
そこでは”マム”と呼ばれるコンピューターがすべてをコントロールし、支配している。
まるで神のような存在。
しかし、なぜか、そのマムが変調をきたしているらしい・・・。

もう一つは、事故で入院していたマツザキの話。
彼にはスウという恋人がいたのだが、退院後、誰に聞いても、そんな人は知らないという。
スウは自分が作り出した妄想だったのか。
それとも、記憶が混乱しているのか。

そしてさらにもう一つは、地質学者ジョーの話。
彼は250年をかけて、かつて地球人が建造した人口の惑星プシュケに降り立った。
しかし、そこは、すでに砂漠化し、滅びてしまっていた・・・。
かつては繁栄した都市も、砂に埋もれかけた廃墟。


読み進むと、、コンピュータ”マム”の支配する街というのが、
その砂漠化した惑星プシュケのかつての姿なのだろうということは想像がついてきます。
でも、マツザキのエピソードがなかなかつながらない。

これらが終盤で、ぴたっと重なるところがなかなか面白い。
さて、どこがミステリかというとですね、これが実に正統派の密室。
プシュケの砂漠の中にある、出入り口のない箱のような建物。
かろうじてひび割れた隙間からカメラを差し入れて中の様子を見てみると、
天井に張り付いているミイラ・・・。
なぜこんなところに?
第一どうやってここに入ったのか。
犯人がいるとしたら、犯人はどこから出たのか?
どうして、こんな死に方をしたのか?

その答えが、これまた、まさにSF。
実に壮大なスケールの出来事なのでした。
というか、この物語は、このトリックを使うがためのストーリーと思える。
いやはや、まいりました。

でも、結果的に、この物語はこのミステリ仕立ての部分がなくても十分に通用する、時空をこえたロマンSFとなっています。

この方の第2作は、このようなSFではなく、学園ミステリとのこと。
そちらも、読んでみたくなりました。

満足度★★★★