映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ディセンバー・ボーイズ

2007年12月04日 | 映画(た行)

12月の少年たち。
これで普通は、冬を思い浮かべるわけですが、この物語の舞台はオーストラリア。
したがってこれは夏なのです。
語り手は、お年を召したと思われる男性。
彼が、忘れられない少年時代のひと夏の出来事を語っていきます。
少年時代を夏休みと共に思い浮かべる人は多いですね。
あの、井上陽水の甘く切ないメロディーも、そのものずばり。
少年時代が人生の夏だとすると、私たちはその後ずいぶん長い秋と冬を過ごすんだなあ・・・。

さて、ここに登場する4人の少年たちは孤児。
孤児院で生活しているのですが、ある夏、12月生まれのこの4人が、元海軍将校の海辺の家で過ごすことを許されます。
語り手のミスティーは、ちょっぴり弱虫の少年。
この中ではみそっかす的存在ですが、なかなか頭がよくて、ちゃっかりしている。

また、少年というよりは青年期に差しかかっているマップスをダニエル・ラドクリフが演じています。
そう、あのハリー・ポッターですね。
ここでは腕白3人のお兄さん的存在で、ハリー・ポッターとはぜんぜん違うイメージ。初恋に揺れ動く瑞々しい思春期を好演しています。


夏休み、光り輝く海、孤児院から離れた開放感、
・・・なんて美しい情景。
海岸や海を見下ろす丘を、駆け回る彼らの映像にしばし見とれてしまいます。

やがて彼らは子供に恵まれない夫婦と知り合うのですが、
どうも、彼らは養子をもらうことにするらしい。
この4人のうちの誰かを・・・。
自分だけに注がれる愛。家庭。
そうしたものに飢えた彼らには願ってもないこと。
少しでも、自分をよく見せたいと、アピールする彼らの姿は微笑ましい。

でも少しずつ、美しい自然の中でのんびり幸せそうに暮らすその地の人々にも、
それぞれの抱えている悩み、苦しみがあるのだということを彼らは理解していきます。
楽しく、開放的なひと夏のうちにも、大人へのステップを確実に踏んでゆく少年たち。

さて、結局誰が養子に選ばれるのでしょうか・・・。


この映画のラストは、それから50年ほどを隔てた現代。
この思い出の地に3人の老人が再び集まりました。
残念ながら、一人が欠けている。
だからこそ残りの3人が集まることになったのですが。
忘れられない彼らの「夏」を偲びます。

ノスタルジーについ浸ってしまいます。
それは、ここに再び集まった老人たちだけではなく、
誰もが心の奥底のポケットにしまいこんだ「夏休み」を
持っているからかもしれません。


2007年/アメリカ/105分
監督:ロッド・ハーディー
出演:ダニエル・ラドクリフ、クリスチャン・バイヤーズ、リー・コーミー、ジェームズ・フレイザー

「ディセンバー・ボーイズ」公式サイト