「ぼくらの時代」 栗本薫 講談社文庫
1978年、というので約30年前、栗本薫氏の初のミステリにして江戸川乱歩賞受賞作。
しかし、なぜかこれ、読んでなかったんですねえ・・・。
相当な話題作ではあったはずです。
この本は、今読んでもなかなか凝った構成のミステリなんですが、
当時、長髪に代表されるシラケ世代から描いたものとして話題になったのではなかったでしょうか。
栗本薫氏とほぼ同年代の私も、つまり、当時はヤングだったのです・・・。
だから、今読んでも、すごく共感がわきます。
主人公の「栗本薫」くんのロックグループが「ポーの一族」という名前だったりするのも、にんまり、ですし。
この中では、しきりに「世代の断絶」が描かれています。
当時20歳前後の若者と、その親たちの世代。
まあ、当時長髪はいわゆる大人には、かなり忌み嫌われていたんですね。
やや、体制への反抗のような意味合いもありましたから。
さて、30年を経て、そのヤングたちが今、完全に体制側なのです。
そして自分の子供たちの若い世代をわからないと嘆く。
いつになっても世代の断絶の構図は変わらないということですね。
ただ、どうなのでしょう、「僕らの時代」の中でのオトナたちは、
「私たちがあの年だった時にはもう、働いて一人前に独立していた・・・」と嘆くのです。
その意味では確かに大人なのです。
ところが今の大人たちは、私も含めてですが、自分に大人だという自覚がないような気がする・・・。
私自身30年前の自分と今の自分がそう違うとは思えない。
つまりぜんぜん進歩していない。
30年前のシラケ世代がそのまま年をとっただけ。
でも、その世代が今の若者をわからないというのだから、
これはもう、あと30年後にはどんな世の中になっているものやら・・・・。
ある方がいっていました。
少しずつの変化だからわからないけれども、
今、情報化・国際化・グローバリズムの世界へと確実に世の中は変化している。
この中で生まれた今の子供たちから見ると、私たちの頭の上にはちょんまげが見えているだろう、と。
古い価値観のままで物事を捉えていてはいけない、ということ・・・。
何も若者の思考に合わせなければならないというのではないのですが、
昔の概念で「よかった」ことは今はもう通用しないということを、理解した方がいい。
その上で、じゃあ、今は何がいいのか、じっくり考えて見る必要があるということですね。
何事においても。
ぜんぜん本から外れてしまいましたが、このようなことを、考えてしまった次第。
今読んでも、私はぜんぜん古いとは感じなかったですが、
さて、今の20歳前後が読んだら、どうなのでしょう。
感想を聞いてみたい気がします。
満足度★★★★