グイン・サーガ118「クリスタルの再会」 栗本 薫 ハヤカワ文庫
さあ、トントントンと月刊できたグイン・サーガ、118巻。
今度は寄り道無し!無事、パロに到着しました~。
待ちに待った、グインとリンダとの再会。
さて、どうですか?
そうですねー、今までずっとアクティブでしたから。ここでは、平穏が強調されます。突っ込みどころがなくて、ちょっと寂しかったりもしますが・・・。
なんだか、それぞれが深く静かにものを想う・・そんな一冊ですよね。
まずはマリウス。
彼は前巻から、静かでしたよねえ。
今度、パロに帰ったら、もう抜け出せなくなってしまう。
そんな強迫観念にとらわれて、沈み込みっぱなしの、珍しく無口のマリウス。
そうですよー、えらそうに、物々しく国を治めるマリウスなんて、ぜんぜん想像できないじゃないですか。
彼は吟遊詩人にしかなりえないですよね・・・。
本人がどこでのたれ死んでもいいといってるんだから、ほっときゃいいのに・・・。
そうもいかない、国の事情というヤツですよ。
昔の話だから・・じゃないですよ。
この現在、日本でだって、皇室とかいうおかしなしきたりで、人権も無視されてる方がいたりするんだから・・・。
それから、ブラン。
彼も、思い切り悩んじゃいましたね。
もう、スーティーを連れ去る気力もないし、だからといって空手で帰ることもできない。カメロンを裏切ることもできないし、グインも大好きだ・・・。
パロまでのこのこついていっても、どうにもならないし・・・。でも、彼もとうとう最後の決断を下して、カメロンの元へ単身で戻ることになるわけですね。
ただ、これまでのことはすべてかメロンに報告すると明言して。どうなんでしょうかねえ。グインは、それでよしとしてしまったけれど・・・。
うーん、希望的観測だけど、カメロンはその話をにぎりつぶしちゃうんじゃないかなあ。
どう考えても、それをイシュトに伝えない方が、みんなの幸せだもんね。
この先の注目!だね。
グインは結局記憶が戻らないんですね。
今回すごくしんみりと来ちゃう、名セリフがありました。
「『この俺は何者で、なぜにかくあるのか。俺はどこから来て、どこにゆくのか』
・・・これほど答えをみいだせぬ問いそのものを抱えて生きてゆかねばならぬということ、
そしてそれはおそらく、豹頭であるとないとに係らず
すべての人間が多かれ少なかれそうなのだろうということに思い当たったとき、
俺は、俺の抱いているその疑問というものは、
決して豹頭なるがゆえの特殊なものではないのではないか、と思ったのだ。」そうなんですよねえ・・・。グインの苦しみはすべての人の苦しみ・・・。
うん、名シーンですねえ・・・。
リンダはまた、14のとき、初めてグインにあったときのこと、そしてまたイシュトバーンとの初恋を覚えたその頃を思い出してしまう。
そして、グインを父や兄のように頼もしく思っていただけのはずなのに、ほんの一瞬、こみ上げる自分の感情に、愕然とし、うろたえる、というシーン。
意味深なシーンだよね。この先を暗示しているのかなあ???
記憶をなくしたグインが、まず、目指そうと思ったのが、パロであり、リンダなんだもんねえ・・・。
・・・ということで、派手な事件もアクションも無しですが、私はこの巻、結構お気に入りです。
満足度★★★★