映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「シンデレラ・ティース」 坂木 司

2009年05月02日 | 本(ミステリ)
シンデレラ・ティース (光文社文庫)
坂木 司
光文社

このアイテムの詳細を見る


この著者は、「青空の卵」から始まる引きこもり探偵のシリーズで、
ファンになりまして、
この本も、迷わず買いました。
大学の夏休み中、歯科医の受付のバイトをする咲子が主人公。
一応ミステリですが、
歯医者さんで殺人事件が起こったりはしないのでご安心を。
「日常の謎」を解いてゆくストーリーです。


例えば、
ある女性患者の関係者と思われる男が突然乗り込んでくる。
『何でこんなに治療に長くかかるんだ! 
しかも、とんでもなく強い薬まで出して!』
・・・しかし、それは全く事実無根。
これは一体どういうこと・・・?

また、例えば、
ある男性は電話の受け答えはとても感じがいいのに、
実際に通院してくる時はいつもつっけんどん。
こんなに印象が違うのはなぜ・・・?

患者が心に持つ大事な秘密を解き明かしていきます。


咲子は実は、子供の頃かかった歯医者の印象が最悪で、
大の歯医者嫌い。
歯医者嫌いというよりは、すでに恐怖症。
そのとき以来、一度も歯医者にかかったことがない。
ここのバイトも母親に騙されて受けることになってしまった。
そんな咲子だったのですが・・・。

ほんとに、歯医者って、できれば行きたくないところの一つですよね。
あの歯を削る時の音を聞いただけで逃げ出したくなってしまう。
でも、ここの歯科医が、すごくいいんですよ。
患者の気持ちを大事にする。
そして、スタッフもまた、個性豊かで、それぞれ素敵な人ばかり。
あまりにも皆いい人過ぎるよ~、と不満に思ってしまうくらい。
本当にこんな歯医者さんがあれば患者としていってみたいし、
働いてもみたい。
いやいや始めたバイトではありながら、
患者やスタッフの役に立つとうれしく、
どんどんやりがいを感じて、
受付でも、歯科の知識がなくては・・・と、勉強まで始める。

こういう、成長の物語でもあるのです。

そしてまた、私としてはここがポイント高いのですが、
歯科技工士、四谷へのほのかな思い・・・、
その恋の行方。
これがいいんです!!
四谷は気取らなくてちょっとぶっきらぼう。
でも、すごく細やかな観察眼。
器用なその手、細くて美しい指。
男性のきれいな指って、なんだかちょっとドギマギしちゃいます。
私も、こういう人は好きだなあ・・・、
なんて、それはどうでもいいのですが。

というわけで、いろいろな方向から楽しめてしまう。
おススメです!

満足度★★★★☆