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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「思考の整理学」 外山滋比古

2009年05月25日 | 本(解説)
思考の整理学 (ちくま文庫)
外山 滋比古
筑摩書房

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「東大と京大で一番読まれた本。」
(※2008年大学生協調べ)
このキャッチコピーについ興味を引かれ手に取ったこの本。

まず冒頭で、著者はこんなことを言っています。
少し長いですが引用します。


学校というのは、先生と教科書に引っ張られて学習をする。
独力で知識を得るのではない。
いわばグライダーのようなもので、自力では飛び上がることができない。
学校は、グライダー人間の訓練所である。
グライダーの練習にエンジンのついた飛行機が混じっていては迷惑で、危険。
だから、学校では引っ張られるまま、
どこへでもついてゆく従順さが尊重される。
優等生はグライダーとして優等なのだ。
このような学生が、卒業論文に取り掛かる頃になると途方にくれる。
言われたとおりのことをするのは得意でも、
自分で考えてテーマを決めることができない。
新しい文化の創造には飛行機能力が不可欠。
今まではあまりにもグライダー能力ばかり重視してきた。
現代は情報の社会なので、
グライダー人間をすっかりやめてしまうことはできないが、
グライダーにエンジンを搭載するにはどうしたらいいのか。
学校も社会もそれを考える必要がある。


・・・・というわけで、
この本では、グライダー兼飛行機のような人間となるための
心得が書かれています。
この前段はすごく納得できるのです。
まさに、手取り足取り、かゆいところに手の届くご指導で、
学校は児童生徒学生を導いてくれるのですが、
自力で飛ぶ方法は教えてくれない。
・・・まあ、それであわてて、
「生きる力」を主題とした学習指導要領が出たりするわけですが、
効果のほどは・・・? 
学力は全国一斉の学力テストで検証することができますが、
「生きる力」が身についたかどうかなんて、
なんで計ればいいのでしょうね・・・。


さて、それはともかく、
著者はあるヒントやアイデアをしっかりした形のあるものにするためには、
最初のアイデアを醗酵させること。といいます。
これは、うれしくなって人に言いふらしたり、
いきなり人前で発表したりせず、まずしばらく寝かせておく。
そうするとある日、自然に頭の中で動き出す。
おりにふれて思い出される。
それを考えると胸がわくわくして心楽しくなる。
これが醗酵作用。

また、セレンデュピティという言葉にも触れています。
これは偶然の発見・発明の意味ですが、
つまり、私たちは中心的関心よりも
むしろ周辺的関心の方が活発に動くのではないかというのです。
例えば、乱雑な机の上から、返事を書かなければならない手紙を探す。
あちこちひっくり返しても出てこない。
しかし、なぜかこの間からいくらさがしても出てこなかった万年筆が
ひょっこり出てきた。
・・・こんな様なこと。

だから、考え事をする時も一途にそればかりを考え続けてはいけない。
しばらく寝かせる必要がある。
これも、対象を正視し続けることが思考の自由な働きを妨げるためなのです。
対象を周辺部へ持っていき、セレンデュピティを起しやすくする。
なるほど、仕事などにも応用できそうなことですね。

考えることは、つい面倒で、億劫。
そう思ってしまうのですが、
この本を読むと考えることがとても楽しみに感じます。
<・・・自然に頭の中で動き出す。おりにふれて思い出される。
それを考えると胸がわくわくして心楽しくなる>
こんな風に、物事を考えることができれば幸せです。

自分で空を飛んで、アクロバット飛行もできちゃったらいいですね!

満足度★★★★☆