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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

恋に落ちたシェイクスピア

2009年05月08日 | 映画(か行)
恋に落ちたシェイクスピア コレクターズ・エディション

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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「ロミオとジュリエット」で悲しみのロマンス2倍

        * * * * * * * *

98年度アカデミー作品賞受賞作。
シェイクスピアが主人公と来れば、
もっと地味で難解な物語なのでは・・・と実は思っていたのです。
でも、これはとても楽しめてしまう、ラブロマンスでした。
楽しめる・・・というべきではないのかな。
一応悲恋なので。
しかし、ユーモアを交えつつ、切なく燃え上がる愛に、
ついつい引き込まれてしまいます。


エリザベス朝、ロンドン。
シェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)はすでに売れっ子の劇作家ですが、
スランプに陥っている。
そんな時、裕福な商人の娘ヴァイオラ(グウィネス・パルトロウ)と出会い、
恋に落ちる。
彼女は演劇が大好きで、男装してオーディションに来ていたのですね。
当時、舞台に女性が上ることは許されていなかった。
だから、演劇では男性が女装して演じていたんですね。
日本でも、古来は同じ。
・・・洋の東西を問わず、セクハラの時代は長かった・・・と。

まあ、それはさておき、
このヴァイオラには、親が決めた婚約者がいる。
こちらは貴族で、おもいきり嫌なヤツ。
(しかし、この人が、コリン・ファースなんですよ! もったいない・・・。)
この結婚はエリザベス女王も認めており、そむくわけにもいかない。
けれど、二人の思いはますます燃え上がり、ひそかな逢瀬を続ける。

このあたりから、シェイクスピアの創作意欲にも火がつき、
堰を切ったように物語を書き始めるのです。
それが「ロミオとジュリエット」。
もともとは喜劇の予定だったのですが、
自らの報われない愛を反映し、悲恋へと姿を変えてゆく。

シェイクスピアとヴァイオラ、そしてロミオとジュリエット。
この二つの恋が交差し絡み合い、奥行きの深いストーリーとなっています。

シェイクスピアの劇のセリフは、
ちょっと難解でとっつきにくいと思っていました。
そもそも、きちんとシェイクスピアの劇を見たこともないですもんねえ・・・。
この作品で、二人の逢瀬と劇の練習の映像、そこに劇のセリフがオーバーラップするシーンがありました。
そこでは、詩のようなセリフにこめられた思い、感情の高まりが
スムーズに胸にしみ込んできて、泣けてしまいました。
これが、シェイクスピアの力なんですねえ・・・。
そしてまた、ラストには当然あの、
「ロミオとジュリエット」のラストシーンが来て、また泣けて。
ここのジュリエットは女装の男優ではありませんので、ご安心を!

結局ラストは、ハッピーエンドとはいいがたいのですが、
でもこれもまたなかなか希望に満ちていて、すがすがしいものでした。
これは、男装が良く似合うヴァイオラらしさが良く出ています。
彼女のその後の物語を予感させます。


登場人物たちも、どれもいいのですよ。
エリザベス女王を演じるのはジュディ・デンチ。
さすが迫力です。
女王が水溜りの前へ来て、ふと立ち止まる。
お付の騎士たちは一瞬躊躇した後、
マントを脱ぎ、水溜りに敷こうとする。
女王は「ふん、遅いのよ!」といって、そのままバシャバシャと歩いてしまう。
おかしいですよね。
でも、こういう感じ、好きです。
この映画の後の映画作品で見知っているだけですが、
いかにもエリザベスっていう感じもします。

ヴァイオラの乳母も、良かったですよ。
とにかくヴァイオラが好きで、ちょっと甘やかしてしまうところもある。
二人の秘密の逢瀬がばれないように、
一晩中部屋の前で見張っていたりするんですから。

かと思えば、ベン・アフレックまで出てる。
他にもジェフリー・ラッシュにトム・ウィルキンソン。
おやまあ、なんと豪華な出演陣。
絶対に観て損のない作品です。
・・・というか、今回初めて観たという私のほうが、変ですよね?

1998年/アメリカ/123分

監督:ジョン・マッデン
出演:ジョセフ・ファインズ、グウィネス・パルトロウ、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ラッシュ、トム・ウィルキンソン、コリン・ファース、ベン・アフレック