映画と本の『たんぽぽ館』

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「桜の園/神代教授の日常と謎」 篠田真由美

2009年05月21日 | 本(ミステリ)
桜の園 神代教授の日常と謎
篠田 真由美
東京創元社

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建築探偵の番外編、神代教授シリーズの第2弾です。

神代教授は友人の辰野と共に、大島の親類の家を訪ねることになる。
そこは、今まさに桜の花が異様なほどに咲き乱れ、
その中に埋まっているかのような古い屋敷。
そこに住むのは3人の魔女・・・。
いえ失礼。
魔女のような老女たち・・・。
大島は、ここを訪れることに異様な胸騒ぎを覚え、
この二人の友人に付き添ってもらったのです。
そうして、昔、この家で起きたある事件が浮かび上がってくるのですが・・・。
桜の木の下に埋まっているのは・・・。
そう、あれですよね。

だからこそなのか、ぞっとするほどに静かに美しく咲き乱れる桜・・・。
曰くありげな3人の老女たち。
古びた屋敷。
ロマンチックなミステリの要素が3拍子そろっております。


ここで推理の冴を見せるのは、京介ではなく、辰野。
彼もまた、なかなかの美形なのですよ。
こういう描写があります。

「辰野はもともと、姿も顔立ちも切れのある凛とした男で・・・
私立高校の紺の制服はまるで
彼のためにデザインされたように見えたものだった。
・・・茶系統の千鳥格子のハンティング・ジャケットに
こげ茶のスラックス、
シャツの襟元からは
あざやかなエメラルドグリーンのアスコット・タイを除かせて、
駅中の雑踏でも
女のふたりに1人は必ず目を見張り足を止めて振り返る男振りだ。」

神代教授は気障が服着てやがるとは思うものの、
様になっていることは否定しようがない・・・と。
これで、小児科医だというのですから。
・・・病気の子供を借りてきてでも、この病院にかかってみたいですね。
気障が服着てるような美形のオジサマ・・・。
うわ~。


さて、この本には2作の中篇が収められていまして、
もう一編は神代教授が幼い頃に亡くした、お母様のお話です。
人の良い教授のところに、3つの相談事が一度に持ちかけられてきました。
全く別のところからのそれぞれの相談だったのですが、
ここが小説の醍醐味。
シンクロニシティというヤツですね。
なんと何の関係もないはずのこの3つの事柄に関連が見えてくる。
ちょっとひなびた感じのする、この話もなかなか興味深く読めました。
こちらにはおなじみ、京介も蒼も美春も登場します。
桜井京介ファンには応えられない一作となっております。


満足度★★★★☆