映画と本の『たんぽぽ館』

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ジェロニモ

2009年05月01日 | 映画(さ行)
ジェロニモ [DVD]

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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滅び行く民族と文化への鎮魂歌

           * * * * * * * *

西部劇、とはいえ熱い男のロマンはありません。
合衆国騎兵隊を相手に抵抗した伝説のアパッチ族戦士、
ジェロニモにスポットを当てています。
大抵の西部劇では、アパッチは最大の敵。
しかし、元はといえば彼らの土地に勝手に進入してきたのは白人なのですから・・・。

このドラマは、20年の抗争の末、ジェロニモが軍に投降するところから始まります。
ジェロニモの護送の任にあたったのは、
ゲイトウッド中尉(ジェイソン・パトリック)と、
士官学校を出たてのデイヴィス少尉。
物語はこのデイヴィス少尉(マット・デイモン)の視点で語られています。

ゲイトウッド中尉は、アパッチ族を良く理解し、
これ以上のお互いの殺戮は避けたいと思っています。
その彼の元でジェロニモを護送する旅。
誇り高く、ときに猛々しいジェロニモ。
デイヴィス少尉はゲイトウッド中尉ともども、彼に惹かれていくのです。

アパッチ一族は、保留地に移され、そこで農耕生活を強いられます。
しかし、この広い大地を駆け回り生活してきた彼らには
苦痛以外の何物でもない。
あるいざこざから、ジェロニモは数十人を引き連れて脱出。
しかし、圧倒的な白人の軍勢や文化に抗い続けることは、無理な話です。

皮肉なことに、ゲイトウッドやデイヴィスは、
アパッチの身柄引き渡しを要求する保安官や、
アパッチを惨殺し、賞金稼ぎをする一団と敵対し、
白人からアパッチを守ったりします。
もうこうなると、何が正義なのかも分からない。

マイノリティの側に寄り添って考えることができる、
このような人物は、当時でも、そう多くはなかったのだろうと思います。
しかし、白人の持つ圧倒的な力は、もはやとどまることがない。
ネイティブアメリカンがこの地での長く培ってきた文化は、
そこでヨーロッパ文化に飲み込まれてしまいました。

この映画は、戦いを描いているのではない。
滅び行く民族と文化への鎮魂歌なのだろうと思います。
だから終始静かな語り口で、極端なクライマックスもない。
言ってみれば、やや退屈ともいえるわけですが、
でも、このテーマとしてはこれが妥当なところでしょう。

1994年/アメリカ/115分
監督:ウォルター・ヒル
出演:ジェイソン・パトリック、マット・デイモン、ジーン・ハックマン、ロバート・デュバル、ウェス・ステューデイ